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機械仕掛けの笑顔

公開済みストーリー・相関図

公開済みストーリーをYouTubeで公開中!!

1章 豪華客船殺人事件

2章 相棒解剖事件?

3章 タロット・ラビリンス

4章 機械仕掛けの笑顔第1話~第2話

相関図

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第4章 機械仕掛けの笑顔 第3話

〇[【プレイヤー】の回想]公園(夜)

  シャーロットが
  【プレイヤー】の元を
  飛び出して行った時の
  記憶――。

  苦しそうに己の気持ちを
  吐露するシャーロット。


「キミとの契約を続けるか、
  タロットの謎を
  解明するか……
  リィチ君に選択を
  迫られた

ずっと、ずうっと
  追ってきた謎だ。
  間違いなくタロットを
  選ぶ……

――それが探偵
  シャーロット・シームズ
  としては正しい選択。
  なのに……」

シャーロット
「キミの事がよぎって、
  謎を、選べなかった」

シャーロット
「ねえ……、
  これが『感情』なの?」

シャーロット
「ボクはこんなもの
  要らない……
  欲しくなかった……

キミといるとボクは
  ボクじゃなくなっちゃう
  んだ……!!
ボクはこれ以上
  キミと一緒にいるのが
  怖いんだ!!」

〇[回想終わり・現実]列車の中

  シャーロットを迎えに行く
  にしても、
  あんなに苦しんでいる
  彼女になんて伝えれば
  いいのだろう。
  勿論自分の気持ちは
  決まっているけれど……。

  【プレイヤー】は
  思い悩んでいた。

【プレイヤー】
「………………」

  重い溜息を吐く。
  と、隣に座っていた
  クロードが
  【プレイヤー】の様子に
  気が付いた。


「【プレイヤー】、
  どうした?
  長旅で疲れたのか?」

  ボックス席の向かい
  側で、お喋りに
  興じていた
  キィランとノノインも
  気付いて。


「えっ? 大丈夫?」


「体調悪いの??」

  ここまで
  ついて来てくれた
  コードマン達に
  今更こんな相談をするのは
  どうかと思いつつ、
  【プレイヤー】は
  不安を正直に話した。

【プレイヤー】
「シャーロットが
  戻ってきてくれるか
  どうか分からない……」

  先程まで思い返していた
  記憶を、コードマン達に
  詳細に説明した。

クロード
「――そうか……。
  シャーロットが
  そんな事を…………」

ノノイン
「『エレメント』が増える
  毎に感情が豊かになる……
  そんな事実が
  あったなんて……!」

キィラン
「セネト・ロールダイスの
  事故があってから
  ビホルダーグループが
  どんどん
  信用できなくなってくね。
  いろんな事隠しててさ……」

キィラン
「シャーロットと
  【プレイヤー】、
  ザ・ゼノンでどんどん実力
  伸ばしてたし、沢山
  エレメント溜まってたよね

それで、
  シャーロットは
  急激に感情が
  発達したんだね……」

  キィランが冷静に
  分析する。
  ノノインは心配そうな
  表情で。

ノノイン
「シャロっち……きっと
  その変化について
  いけなくって
  混乱しちゃったの
  かも……」

クロード
「確かに、
  そんなシャーロットに
  どんな言葉を掛ければ
  いいのか……。
  難しいな」

  クロードは
  顎に手を当て考える。

ノノインキィラン
「う~~~~~ん……」

  ノノインとキィランも
  一緒になって
  考えを巡らせる。

  列車の走行音が
  暫く響いた後、
  不意にクロードが
  呟いた。

クロード
「……感情は要らない、か」

キィラン
「ん?」

クロード
「いや……昔、
  俺も同じ事を考えていた
  時期があった。
  捜査に感情など
  必要ないとな」

クロード
「だが、それは違うと
  教えてくれた人がいた。
  【プレイヤー】には
  話した事があったな

その人が言っていた……。
  『人の感情の動きを考慮する
  事は、捜査の基本だ』
  『何故なら事件は人が起こすからだ』
  と……」

クロード
「例えAIでも……、
  感情が邪魔だと
  思ったとしても……、
  感情を持つコードマンにこそ
  出来る事だってある筈だ」

クロード
「……俺がそう思えたのなら、
  シャーロットも、
  そう思える可能性はある。
  俺は、そう思う」

  シャーロットがそう
  思ってくれたら。
  感情を持つ事は
  悪い事じゃない、
  そう、気づいて
  くれたら――。

  【プレイヤー】の表情に
  希望の灯が灯る。

  ノノインとキィランは、
  それを見て笑顔になった。

ノノイン
「よしよし☆
  その意気だぞっっ♪♪」

キィラン
「シャーロットを
  連れ戻せるのは
  バディである
  【プレイヤー】だけだ!
  頑張ろうっ!」

  クロードは
  【プレイヤー】の
  肩を叩いた。

クロード
「……目的地まで
  あと少しだ」

  ――列車は、
  旧ベアトニアへと向かう。

 

  古びた洋館の前に立つ
  シャーロットとリィチ。


「ここが……原点?」


「そうです。タロットは
  ここで生まれた――」

リィチ
「――魔女によって
  創り出されたんです」

シャーロット
「魔女…………」

リィチ
「この地には古くから
  魔女にまつわる俗信が
  ありましてね
15世紀から
  17世紀にかけては
  魔女狩りなんてのも
  行われていたらしいです

科学技術が発達した
  この時世に
  何の与太話をと
  思うでしょうが……」

リィチ
「魔女は本当に存在した」

  と、リィチは懐から
  例のタロットカードを
  取り出してみせる。

リィチ
「このタロットカードは
  ゼートレート・ログレイド・
  アリスキルと言う女性が
  生み出した」

シャーロット
「ゼートレート……」

リィチ
「魔女です、本物の」

  学者がオカルトを
  信じている。
  普段のシャーロットなら
  声に出して笑っている
  ところだろう。

  しかし、あのタロットは
  オーパーツ。
  存在し得ない代物だ
  と言う事は、
  シャーロット自身が
  証明してしまっている。

  だから魔女の話だって
  あり得ない事じゃない。
  現にあり得ない事が
  有り得ているのだから。

  シャーロットは
  リィチの話を黙って
  聞き続けた。

リィチ
「あんなものを、
  只の人間が
  あの時代に創り出せる
  訳がない」

シャーロット
「……それには、
  ボクでも知らない
  プログラムが
  書き込まれていた」

シャーロット
「けど、魔女が
  プログラムを
  構築したなんて……
  一体何のために……?」

  リィチは焦らす様に
  間を取った。

リィチ
「そのプログラムは……」

リィチ
「コードマンを構成する
  重要な論理式だと
  言われています」

  シャーロットの中を
  疑問が埋め尽くした。
  処理しきれず、
  言葉を失う。

  中世のタロットに
  書き込まれたプログラムが
  コードマンを
  構成するもの……?

  ついていけない
  シャーロットは、
  リィチの解説を遮った。

シャーロット
「待ってくれ、
  リィチ君

コードマンは、
  学習を重ねた
  AIが閾値に達して
  突然変異したもの
  だろう?

論理式があるなんて
  聞いた事……!」

  リィチは表情を変えず
  淡々と事実を述べる。

リィチ
「コードマンに
  進化する因子は、
  どんなAIでも持っている」

シャーロット
「――!!」

リィチ
「ビホルダー社製の
  全てのAIに、その因子は
  入っているんです」

  ――血縁から知り得た
  であろう事実を
  ただただ淡々と。

リィチ
「その昔、貴方と同じように
  このタロットに論理式が
  書かれていると気付いた
  ビホルダー社の
  科学者がいた

どのようにして気付いたかは
  よく分かっていません。
  彼は同僚に『天啓を受けた』
  などと漏らしていたようです
科学者はタロットに書かれた
  たった一部の論理式を元に
  あるプログラムを組んだ」

リィチ
「それを、自社製のAIに
  仕込んだのです」

リィチ
「彼が
  これによりAIが進化し
  コードマンとなる事を
  予測していたのか、
  それも分かりません
彼は狂っていたなんて
  話もある

……彼がそんな因子を
  仕込んだと判明したのは
  コードマン誕生後……
  彼がとうの昔に
  亡くなってからでした」

リィチ
「そういう訳で、
  コードマンを生み出した
  ビホルダー社すらも
  コードマンについては
  未だよく分かって
  いないのです」

  自分が思っている以上に
  謎は深い。
  シャーロットは
  息を飲んだ。

  そして一つの結論を出す。

シャーロット
「……だから、ビホルダーは
  ザ・ゼノンを
  開催しているんだね……」

リィチ
「ええ。
  ビホルダーは観察している。
  コードマンがこの先
  どう進化していくのかを」

  収穫は予想以上だ。

  シャーロットは震えた。
  ここへ来るまで
  葛藤はあった、しかし
  ここへ来なければ
  こんな情報を
  手に入れられは
  しなかっただろう。

  きっと彼の話は
  ビホルダーの中でも
  知っている人間は
  ごく一部だ。

  ビホルダーが市場に
  自社AIを広く
  流通させている事は、
  『何故飛ぶのか分からない
   飛行機を販売している』
  ようなものだ。

  エレメントの事実と
  同じく、積極的に
  世間に知られたい
  事ではないだろう。

  しかしシャーロットには
  ひとつ不可解だった。

シャーロット
「流石
  リィチ・ビホルダー君。
  ボクなんかの力が無くても
  何だって知ってる
  じゃないか

どうしてわざわざ
  ボクを呼び寄せたり
  したんだい?」

  リィチは苦笑し、
  否定の意で手を振る。

リィチ
「いや、まだ分からない
  事の方が多いですよ。
  だから謎解きが得意な
  貴方の力を借りたいんだ」

リィチ
「……先程、このタロットに
  書かれている論理式は
  たった一部……
  と言いました

僕が考えるに、
  タロットは他にもまだ
  あるんじゃないかと」

  ピクリと片眉を動かす
  シャーロット。
  ああそうか、
  タロットは一枚だけで
  構成されるものじゃあ
  ない。

リィチ
「僕は、ゼートレートが
  住んでいたと言われる
  この場所に、まだタロットが
  隠されているんじゃないかと
  睨んでるんです」

シャーロット
「それを探せ、と」

リィチ
「貴方なら可能かと」

  シャーロットは
  む、と唸る。
  確かにリィチの考えは
  自然だが……。

シャーロット
「だけどね、キミ。
  ……隠した本人が生きてる
  ならまだしも……」

  と言いかけた時。
  突如、耳の奥で
  キィンと音が鳴った。

シャーロット
「――!?」

  まるで強制的に
  シャットダウンされた
  かのような感覚。
  シャーロットの視界が
  暗転する。

  ものすごく近くから
  少女の泣き声が
  聞こえる。

少女
「ど…………みん……」

少女
「せんせ…………
  どう……て………」

  まるで自分が発している
  かのような音の距離感。

  いや――……
  『ような』などではなく、
  まさに。
  まさに自分が
  発しているのだ。

  これは、自分ではない
  自分の記憶。
  私は……アリス……。

アリス
「先生……
  どうして……」

アリス
「どうしてみんな……
  先生を見捨てたの……」

アリス
「先生…………っ」

  ――キィィン!
  再び耳鳴りのような
  音がして。

シャーロット
「――ッッ!?」

  シャーロットは
  ハッと覚醒した。

リィチ
「……シャーロットさん?」

  どうやらあの声は
  シャーロットにだけ
  聞こえていたようで、
  リィチは疑問符を
  浮かべている。

シャーロット
「今……のは……」

  しかしシャーロットは、
  リィチの様子以上に、
  先程の記憶に意識を
  囚われていた。

シャーロット
「彼女……。
  だったら……
  あれはそこに……!」

  シャーロットは
  ふらふらと歩き出す。
  半信半疑、
  だが一刻も早く
  確かめたくて。
  段々小走りになりながら、
  館の裏手へと周る。

リィチ
「シャーロットさん?
  どうかしましたか?」

  後ろから聞こえる
  リィチの声も
  届かない。

  ただ頭に浮かんだ
  記憶の場所へ、
  一心不乱に走る。

シャーロット
「……タロットは、
  あそこに……!」

//END

 

第4章 機械仕掛けの笑顔 第4話

  ――ガッ、ガッ。
  同じような樹木が並ぶ中、
  確信を持って
  ある1本の木の根元を
  掘るシャーロット。
  その辺で拾った石を
  シャベル代わりに
  一生懸命掘り続ける。


「……あの記録と
  同じ場所……。
  ここに……」

  それを後ろから
  眺めているリィチ。


「そんな……まさか、
  こんなところに……?」

  だがじきに
  土と石が接触するのとは
  音とは異なる音が聞こえた。
  リィチは目を見開く。

リィチ
「――驚きました……」

  シャーロットが地面から
  掘り出したのは、
  陶器製の小さな箱。

シャーロット
「……ゼートレート、
  ――アリスは、師リメルを
  弔う為にここを墓とした。
  亡骸の代わりに
  これを埋めたんだ……」

シャーロット
「師に会いたくなれば、
  彼女はいつでも
  ここを訪れた……」

  蓋を開くと、中には
  女性の装身具と、
  タロットカードが
  入っていた。

リィチ
「間違いない、まさしく
  ゼートレートの
  タロットカード……!!
  やはり他にも
  存在したんだ……!」

  珍しくリィチの声に
  興奮が滲む。

リィチ
「流石です、
  シャーロットさん。
  世界最高峰の
  調査プログラム
  だけある……!!」

  しかし、
  シャーロットは
  冷静に答える。

シャーロット
「いや、ここと
  分かったのは
  ボクが導き出した
  からじゃない」

シャーロット
「導かれたんだよ。
  師を失った
  アリスの唯一の拠り所
  だったこの場所に」

リィチ
「導かれた……?」

シャーロット
「ボクにも
  正直信じられないが
  ……突然『再生』
  されたんだ、
  ――アリスの記憶が」

  シャーロットは一瞬に
  して『思い出した』
  記憶を話し始める。

シャーロット
「ゼートレート・ログレイド・
  アリスキルと、その師
  リメル・ナル・マリエンリータ

アリスの行いが発端となり、
  師リメルは魔女の嫌疑を
  掛けられた

そのままリメルは
  魔女として裁かれ
  火炙りに処された」

シャーロット
「今までよい関係を
  築いていたと
  思っていた村人達が口々に
  『リメルは魔女』だと
  証言したからだ

リメルは最後まで
  『人間と自分達は
  共生できる』……
  そう言っていた。
  アリスも、その言葉を
  信じようとした」

シャーロット
「しかし――……」

シャーロット
「その望みは
  叶わなかった。
  アリスは、
  人類の醜さに
  絶望した」

  ――リメルの死から
  ゼートレートの死の
  間際までの記憶。

  リィチは驚きながら
  それを聞いていた。
  驚いているのは
  話している
  シャーロット本人も
  また同じだった。

シャーロット
「これは……
  【プレイヤー】クンが
  ボクにくれた
  あの絵本の物語」

シャーロット
「あれは
  ゼートレート・ログレイド・
  アリスキルと、その師
  リメル・ナル・マリエンリータ
  の物語だったんだ……」

シャーロット
「タロットと、
  絵本と、記憶。
  何なんだ、
  この不思議な
  リンクは……?

記憶の中と同じ場所に
  タロットが存在した
  という事は……
  御伽噺は現実なのか……?」

リィチ
「――素晴らしい推理です」

シャーロット
「……!」

リィチ
「ふたりの魔女の話は
  御伽噺として存在する。
  そのルーツは、
  史実から生まれた
  民間伝承……

ゼートレートと
  リメルの存在は、
  ビホルダーも
  掴んでいる事実」

リィチ
「貴方の魔女の記憶は
  現実にあった事だ」

  ここへ来てから
  驚く事ばかりで、
  流石のシャーロットも
  混乱してきた。

シャーロット
「でもどうして……
  あれが突然ボクの中で
  再生されたのか……」

リィチ
「本当に、
  導かれたのかも
  しれませんね。
  ……魔女に」

  リィチは果たして
  こんな冗談をいうような
  男だっただろうか。

  最初に近づいてきた時は
  お茶らけてみせる場面も
  あったが、この男は
  基本的に他者との
  コミュニケーションを
  疎ましいものだと
  考えている節がある。
  笑顔の裏に
  冷たいものがある。

  それがシャーロットの、
  リィチへの人物評だ。
  先のリィチの台詞は、
  彼が本心だ。
  魔女は、真実なのだ、
  そう思った。

リィチ
「さて、真面目に原因を
  追究すれば……
  怪しいのは
  コードマンの中にある
  『因子』でしょうか

タロットから
  つくられたそれが、
  魔女の館に訪れた事により
  何らかの作用を
  引き起こした」

シャーロット
「……馬鹿な」

  シャーロットは頭痛に
  襲われたかのように
  片手で顔を覆った。

  流石に荒唐無稽な話の
  連続でついてこられなく
  なったのか、とリィチは
  声をかけようとした。

  だが――。

シャーロット
「……ククッ……。
  あは、アハハハッ!」

  ――シャーロットから
  発せられたのは
  笑い声だった。

シャーロット
「全く!
  ひとつ答えを見つけたと
  思ったら新たな謎が次々と
  現れる!」

シャーロット
「なんて……」

シャーロット
「なんて面白いんだ……、
  ゼートレートの
  タロット…………!」

シャーロット
「もっと知りたい……
  ゼートレートの事……
どうしてこんな事を……!?
  コードマンを生み出した
  目的は何……!?
キミの元にある真実、
  全て知りたい……っっ!」

シャーロット
「キミに会えば、謎が
  明らかになるのかなぁ……
  ゼートレート・ログレイド・
  アリスキル…………!!!」

  シャーロットにとっては、
  それが謎由来であるのなら
  混乱でさえも楽しかった。

  底知れない謎に
  出会えたことへの
  興奮、歓喜。
  これこそ、世界の謎とも
  呼べる謎……。

  世界最高峰の
  調査プログラムに
  見合った謎!

  興奮するシャーロットを
  見て、リィチは……
  表情を失くした。


「………………………………」

リィチ
「………………………………
  ………………………………
  ………………………………」

リィチ
「…………本当に、驚きだ」

シャーロット
「リィチ君……?」

  シャーロットはふと
  気づく。
  リィチの無表情に。
  リィチはそのまま
  続けた。

リィチ
「貴方が余りに
  そっくりそのまま
  僕と同じだから
  驚いたんです

表情を作る
  リソースなんか、
  割いていられない
  くらいにね」

リィチ
「僕達は魔女を求める。
  真実こそこの世で一番
  信用できるものだ」

リィチ
「真実以外は不純」

リィチ
「やっぱりお前しかいない、
  シャーロット・シームズ。
  ……ふたりなら『因子』
  を紐解いてゆける
このままタロットカードを
  揃えていけば、論理式の
  全容が分かる

いくら調べても
  解析できなかった
  コードマンの中を
  調べるより――

タロットを集め、
  シャーロット・シームズの
  『因子』の反応を
  観察していけば――」

リィチ
「誰も知り得なかった
  ゼートレートを
  解明できる……」

  異様だった。
  彼の表情からは
  興奮も喜びも
  感じられない。
  台詞と釣り合いの
  とれない表情。

  シャーロットは
  少し、怖くなった。

シャーロット
「……リィチ君、
  キミはまるで……」

シャーロット
「――エレメントを
  失ったコードマンの
  ようだ」

  彼の裏にある
  冷たいものの正体が
  シャーロットには
  見えた。

  するとリィチの顔に
  いつもの張り付いたような
  笑みが戻る。

リィチ
「……何です?
  それは憐みの目ですか?
おかしいですね。
  貴方は『感情は要らない』
  と、調査プログラムとして
  の意志を尊重してここに
  来たんじゃないですか」

リィチ
「それなのに
  『感情がない』事を
  憐れむような
  その物言い、
  矛盾していますよ」

シャーロット
「君には、感情がない……。
  それは生まれつきなの?」

リィチ
「生まれつきそんな人間が
  いるんですよ。
  今みたいな目、
  良くないなあ?
  傷ついちゃいますよ

ハハ。
  隠していたつもりは
  ないんですがね。
  びっくりしすぎて
  出ちゃいましたよ、
  素が」

リィチ
「まだまだ貴方との
  コミュニケーションには
  演技が必要かな?
  驚かせてしまった
  ようだし」

シャーロット
「演技……」

  かつての自分を重ねる。
  確かにリィチの言う通り、
  彼と自分は似ていた。

  シャーロットの明るさは
  演技だった。
  それは現場に入り込み
  円滑に捜査をする為、
  調査プログラムとして
  学習した成果であった。

  リィチの張り付いたような
  笑顔も、それだったと
  いう訳だ。

シャーロット
「……ボクが
  そうしていたのと
  同じ様に……」

リィチ
「探求こそが全てであり、
  人間としては
  何か足らない存在」

リィチ
「ね……?
  貴方と僕はおんなじだ」

シャーロット
「……………………っ」

  今初めて真意が分かった。

  彼の行動原理は
  殆どAIと変わらない。
  学習で得たもののみが
  彼にとっての真実。

  シャーロットは、
  思い知らされる。
  自分が、彼を
  気にくわない理由、
  それは、同族嫌悪。

リィチ
「だけど貴方はまだ
  感情を捨てる事に
  抵抗があるようだ」

リィチ
「仕方がない。
  僕が代わりにそれを
  捨ててあげますよ――」

シャーロット
「…………!!
  一体何をする
  気だい……?」

  思わず後退る。
  感情を捨てられる……
  つまりそれは……。

  リィチに問いつつも、
  シャーロットには
  この後の展開が
  読めていた。

  そして同時に後悔する。
  立ち向かうには、
  バディがいない。

  【プレイヤー】が隣に
  いないバトルを、
  今の自分が
  乗り越えられるのか?

シャーロット
「…………!」

  そして、気付く。

シャーロット
(馬鹿だな、ボクは……。
  また結局
  【プレイヤー】クンを
  求めている――)

  そう、自嘲したその時。

【プレイヤー】
「シャーロット!!」

リィチ
「――!?」

シャーロット
「嘘……
  【プレイヤー】クン!?」

  この場にいる筈のない、
  【プレイヤー】が現れ、
  シャーロットは驚く。
  しかし予想外の登場は
  これだけで終わらない。


「シャーロット。
  【プレイヤー】を
  置いて勝手に
  どっか行っちゃうなんて!」


「めっ☆
  ……ってしに来たよ!」


「家出コードマンを
  送り届けるこっちの
  身にもなれ」

シャーロット
「ののっち、キィラン……
  クロード君まで……!?」

【プレイヤー】
「さあ、一緒に帰るよ!!」

  【プレイヤー】は
  シャーロットに
  力いっぱい
  手を差し伸べた。

//END

 

第4章 機械仕掛けの笑顔 第5話

  自分を追ってやってきた
  【プレイヤー】と
  コードマン達の登場に
  シャーロットは
  驚いていた。


「【プレイヤー】クン……」


「……お友達をたくさん
  連れて来たんですねえ」

リィチ
「でもシャーロットさんは
  自分の意思で
  ここへ来たんですよ?
  調査プログラムとして
  謎を解く為に」

リィチ
「その意思を尊重して
  あげないのは
  可哀想じゃあありません?」

  リィチの嘲るような声を
  明るい声がかき消す。


「ノンノンっ!
  例えそうだとしても
  【プレイヤー】っちと
  シャロっちはバディ
  なんだよ!!」


「まだ契約は生きてる。
  続行か解除か、
  決めるには
  話し合いをしなきゃ」

  二人のコードマンに
  後押しされて
  【プレイヤー】も訴える。

【プレイヤー】
「戻ってきてよ、
  シャーロット!」

  暫くの沈黙の後、
  シャーロットは
  辛そうに答えた。

シャーロット
「…………駄目だよ」

ノノイン
「なんでっ!?」

シャーロット
「【プレイヤー】クンと
  一緒に居ると
  ボクは鈍ってしまうんだ。
  謎を追いかける事が
  出来なくなってしまう」

シャーロット
「ボクが
  ボクじゃいられなくなる」

シャーロット
「それにボクがタロットの
  謎を解く事は、運命
  付けられているんだ。
  ボクの核に刻まれた宿命
  なんだ……」

シャーロット
「ボクはこの旅で良くも
  悪くも確信を得た。
  リィチ君の元にいるのが
  タロット解明の
  近道なんだって……」

  シャーロットは未だ
  AIとしての使命と、
  感情との間で
  揺れ動いている。

  【プレイヤー】は
  改めてショックを受ける
  が、しかし同時に
  まだ希望はあると
  確信する。

  まだ迷っているのなら、
  チャンスはある。
  こんな悲しい終わり、
  絶対に嫌だ。

シャーロット
「所詮ボクはAIだ。
  ボクに情なんか
  かける必要ない。
  いつまでも引き摺るのは
  お互いに良くない……」

シャーロット
「【プレイヤー】クン、
  契約を解消しよう――……」

【プレイヤー】
「嫌だ!!」

シャーロット
「………………ッッ!」

【プレイヤー】
「シャーロットは
  只のAIじゃない……!!
  一緒に過ごした日々が
  何よりの証拠だ!」

  一緒に笑ったり、
  一緒に食事したり、
  一緒に過ごしてきた
  からこそ分かる。
  シャーロットには
  感情がある。
  ただのAIなんて、
  言わせやしない。

  【プレイヤー】は、
  強く訴える。

シャーロット
「……その時の振る舞いは
  全て演技だよ……。
  気に入られやすい振る舞いを
  していただけだ……。
  そこには計算しかない――」

  ただのAI、ミーナみたいな
  コードマンではないAI
  だって出来る、
  『感じのいい振る舞い』。

  【プレイヤー】との思い出は
  それの延長線上でしかない。

  そう言って、
  シャーロットは
  【プレイヤー】から
  視線をそらした。


「――本当にそうか?」

  今まで黙っていた
  クロードが口を開いた。

クロード
「確かに全てのAIは
  人間と接する上で
  好感度の高い振る舞い
  をするよう
  プログラムされている」

クロード
「だが『人格』と呼べる程の
  インターフェースを持つ
  我々だ。行動全てが
  プログラムであるとは
  言い難い」

  シャーロットが
  黙ったままでいると、
  キィランもクロードに
  同調してきた。

キィラン
「一緒に居ると鈍るって
  つまり、【プレイヤー】と
  一緒だと、演技したり
  計算出来なくなるって事
  でしょ?」

キィラン
「そんな精神の動きを
  していて、
  ただのAIなんて言える?」

シャーロット
「でもボクは……それが
  怖いんだよ……」

シャーロット
「謎を解明する為に
  プログラムされた
  ボクが、謎の為に
  動けなくなるのがさ……」

ノノイン
「シャロっちぃ………」

  あの明るいシャーロットが
  苦悩している。
  それだけで苦しみが
  よく伝わった。

  謎を解明したいという
  欲求こそ、
  彼女のレゾンデートル。
  シャーロットにとって、
  【プレイヤー】が大事
  じゃないという訳ではない。

  謎を追わない自分は
  シャーロット・シームズ
  ではない。

  彼女にとって、謎を選ぶか
  【プレイヤー】を選ぶかは、
  生か死かの選択なのだ。

リィチ
「――【プレイヤー】君、
  こんな無理強いまでして
  コンコードで
  いたいのかい?」

  リィチが
  やれやれと大袈裟に
  溜息を吐く。

リィチ
「……あまりコネを
  使うのは良くないんだけど、
  ビホルダー社の人に
  掛け合ってみようか?」

リィチ
「――シャーロットさんとの
  契約を解消する代わりに
  新しいコードマンと
  契約できないかどうか」

それならコンコードで
  いられるし
  ザ・ゼノンも続けられるよ」

  【プレイヤー】は
  リィチのこちらを
  小馬鹿にした態度に、
  怒りを露にする。

【プレイヤー】
「ふざけるなッ!!」

リィチ
「……だけど、肝心の
  シャーロットさんは
  貴方と契約を
  続けるつもりがない」

リィチ
「もう、
  無理じゃないですか?
  大人しく諦めませんか?
みっともなくて、
  見ていられないですし。
  ――ねえ、
  シャーロットさん」

シャーロット
「【プレイヤー】クン……
  ボクは…………」

  ――シャーロットは
  苦しむ。

  心に決めるのか
  原理に決めるのか、

  【プレイヤー】の
  胸に飛び込むか
  【プレイヤー】に
  また背を向けるか、

  どちらが正しいのか
  何が間違っているのか、

  正解はあるのか
  どちらも不正解なのか。

  こんなワクワクしない
  謎、謎なんかじゃない。
  心を持つというのは
  苦しい事だ。

  魔女よ、貴方が
  コードマンを生み出した
  というのなら、
  どうして感情を与えた?
  リィチ君、君の言う通り
  感情は合理性に欠ける。

  もやもやして
  きゅーっとして
  人はみんなこんな苦しみを
  抱えているの?
  どうして迷うの?

  【プレイヤー】クン、
  キミにさえ出会わなければ。
  ボクはボクでいられた。
  ズルイよ、
  【プレイヤー】クン。
  キミのせいだよ。

  どうしてボクの思考は
  キミに
  支配されているんだ。
  どうして、どうして――

ノノイン
「そっか! わかったっっ!」

  と、ノノインの
  素っ頓狂な声が、
  シャーロットの思考を
  停止させた。

ノノイン
「シャロっちは
  【プレイヤー】っちに
  『らぶ』なんだね!?」

  その台詞は。

  シャーロットだけでなく
  この場の全ての存在の
  時を止めた。

  キィランも、クロードも、
  【プレイヤー】も、
  リィチでさえ。

  誰しもが思った。

 『何を言ってるんだ、
  コイツは……?』と。

シャーロット
「…………えっと?」

クロード
「ら、ぶ…………?」

  やっとのことで、
  二人は聞き返した。
  ノノインは
  自分が時空を歪めた事に
  気が付かないまま
  明るく自信満々に話す。

ノノイン
「だってぇ~……
  【プレイヤー】っちと
  一緒にいてブルーになるとか
  らぶだからでしょ??」

ノノイン
「アイドルソングの歌詞でも
  よく歌われてるも~ん♪」

ノノイン
「でもね!
  シャロっち!!
  それって
  全然怖いコトじゃないよ!」

ノノイン
「尊い感情だから
  たくさん題材として
  使われるんだもん!!」

  そして最後に、
  コードマン恋バナクラブ
  の一員として、決める。

ノノイン
「大丈夫だ、シャロっち!
  【プレイヤー】っちへの
  らぶな想いに
  歯止めをかけるなっ☆
  ドヤッ☆」

  冷たい風が吹いた。

  周囲は、更に
  呆気に取られていた。

  クロードなどは
  溜息を吐き
  こめかみを抑えた。
  『空気の読めなさも
   またアイドル』……
  古今東西のアイドルを
  学習した成果であった。

リィチ
「――馬鹿馬鹿しい」

ノノイン
「ふえええっっ!?!?」

リィチ
「もう少しマシな説得を
  したらどうです」

  リィチに一刀両断され
  落ち込むノノイン。

  シャーロットも遅れて
  リィチに同意する。

シャーロット
「そう、だよ……。
  ボクが、AIが
  そんな感情を持つなんて
  あり得ない――……」

クロード
「――あり得ない、だと?」

クロード
「あり得ない事が
  あり得たら。
  それは『謎』では
  ないのか、シャーロット」

  犯人と交渉する時のように、
  シャーロットの言葉の
  隙を突くクロード。

  謎、と言う単語に
  シャーロットは
  ドキリとさせられた。

シャーロット
「……!」

  そこに、クロードは
  追い打ちをかけていく。

クロード
「お前は何故感情を
  持っていると謎を
  追う事の邪魔になると
  考える?」

クロード
「日々起こる
  事件の数々……
  全ての源は人間の感情だ」

  シャーロットの脳裏に、
  アリスの記憶が蘇る。

  アリスの、ゼートレートの
  感情がタロットを生み、
  コードマンを生み、
  そして自分が生まれ
  タロットの謎を
  追っている……。

シャーロット
「…………感情が、謎の源」

  ――感情を否定したい
  自分が追っている
  謎でさえ、
  原点は感情。

クロード
「感情を捨てるという事は
  自ら謎を捨てる事だ」

  クロードは
  語気を強めた。

クロード
「どうなんだ、
  シャーロット・シームズっ!」

シャーロット
「感情が謎の源……
  感情がボクの中にも
  あるのなら……」

シャーロット
「ボクの中にも……
  謎が存在する
  って事――……?」

【プレイヤー】
「一緒に解き明かそう!!
  シャーロット!!」

  感情も謎なら、
  ボクは謎を選んだ事に
  なる。
  それって……
  ボクはボクのままで
  いられるって事
  じゃないか――……!

  ――シャーロットの
  心が、解けた。

シャーロット
「【プレイヤー】クン、
  ボクは…………っ、
  キミと居て
  いいのかな……!?」

  シャーロットの
  表情を見て、
  【プレイヤー】も
  泣きそうになる。

【プレイヤー】
「シャーロット……!」

  ――しかし、
  シャーロットと
  【プレイヤー】の間に
  リィチが立ちはだかる。

リィチ
「どれだけ言葉を
  並べ立てようと
  論理に感情は不要だ」

シャーロット
「――!」

リィチ
「自ら欠陥品に成り下がる
  とは勿体ない……。
  シャーロットは、
  僕の方が上手く使える」

  リィチが携帯端末を
  操作すると、
  宙空に映像が投影される。
  そこに
  映し出されたのは――


「…………………………」

ノノインキィラン
「あれは……!?」

クロード
「ビホルダーの対戦用AIか!?」

リィチ
「出来るだけ穏便に
  済ませたかったが……
  これで
  シャーロットから
  エレメントを奪う

これまでの
  学習記録は残しつつ、
  余計な感情は排除する」

リィチ
「……僕好みに
  カスタマイズ
  してあげますよ、
  シャーロットさん」

【プレイヤー】
「そんなことさせない!」

  【プレイヤー】が
  シャーロットに
  手を伸ばす。
  シャーロットは頷き、
  【プレイヤー】の側に
  駆け寄る。

リィチ
「……貴方達はこの勝負を
  拒む事は出来ない」

  リィチが端末を
  タップする。

  すると、シャーロットの
  アウロスギアが
  音を鳴らした。
  バトル承認の知らせだった。

シャーロット
「アウロスギアが勝手に、
  バトルを承認した……!?」

  賭けるエレメントは、
  シャーロットが蓄える
  エレメントの大部分
  だった。
  負ければ、
  今のシャーロットでは
  いられなくなるかも
  しれない程の量だ。

リィチ
「ただの世界最高の
  調査プログラムに
  還るといい――……!!」

  【プレイヤー】は
  リィチを睨みつけ、
  アウロスギアを向ける。

【プレイヤー】
「やろう、シャーロット」

シャーロット
「【プレイヤー】クン……」

  シャーロットは、呟く。

シャーロット
「……彼と……ううん、
  昔のボクと
  決別する為に……」

  そして、顔を上げ、
  リィチを見据え――。

シャーロット
「ボクは――……!!」

  ――アウロスギアを、
  固く握った。

//END

 

第4章 機械仕掛けの笑顔 第5.5話

〇東欧・魔女の館・裏の森

  シャーロットの『心』を
  賭けたバトルの決着が、
  たった今、ついた。


「ボク達の勝ちだ……」

  シャーロットは
  息を切らしながら、
  しかししっかりとした
  口調でそう告げた。

  リィチは、勝敗で
  一喜一憂する感情すら
  ないのか、
  消えゆくプロトタイプの
  ホログラムを
  見つめがなら、淡々と
  感想を述べた。


「プロトタイプ……
  ここまで役立たずだとは。
  折角借りたのに」

  そして、こちらを
  真っすぐ見据える
  シャーロットに
  視線を投げ返す。

リィチ
「……シャーロットさん、
  いいんですか?」

  すっと懐から2枚の
  タロットを取り出し、
  シャーロットに見せる。

リィチ
「【プレイヤー】君の
  所に戻れば、貴方は
  この『タロット』という
  最大の手掛かりを
  手にする事が出来ない

今回手に入れたタロットも
  元々僕が所持するタロットも
  貴方から遠退く」

リィチ
「本当に、それでも
  いいんですか……?」

  しかし、シャーロットは
  もう迷わない。

シャーロット
「ごめん、リィチ君」

シャーロット
「なんかさ、みんなに
  感情の存在を
  肯定されてさ……
  ボク、
  ほっとしちゃったんだ」

シャーロット
「意味が分からないよね。
  ボクも自分が理解出来ない」

シャーロット
「でも、分からないから
  惹かれる」

リィチ
「……!」

シャーロット
「クロード君の言うように、
  ボク自身の中にも
  謎があった」

シャーロット
「ボクはさ、
  この謎だって
  無視できないんだ」

シャーロット
「そして、
  この感情は
  【プレイヤー】クンの
  側じゃなきゃ
  解決出来ない

我ながら
  流されやすいな、
  とは思うけど……」

シャーロット
「ボクは、今のボクを
  認めてくれる人と
  一緒にいたい」

シャーロット
「キミ好みの
  昔のボクには
  戻れないのさ」

リィチ
「…………………………」

  シャーロットには、
  リィチが失望したように
  見えた。

  『探求こそが全てであり
   真実のみが己を構築する
   拠り所』という、
  かつてのシャーロットと
  自分を同一視していた
  リィチ。

  もしかしたら彼は、
  仲間が出来たと思っていた
  のかもしれない。
  その仲間を失った喪失感
  から来る失望、
  なのかもしれない。
  推測でしかないが。

  そんな考えを巡らせていた
  シャーロットに
  嬉しそうな声が掛かる。

【プレイヤー】
「おかえり、シャーロット」

  振り返ると、
  うれし泣き寸前の
  【プレイヤー】がいた。

  シャーロットは
  その表情が
  くすぐったく感じた。
  けれど、ずっと
  待ちわびていたものだった。

シャーロット
「世界の謎は、
  やっぱりキミと
  解き明かすとするよ、
  【プレイヤー】クン」

シャーロット
「時間はかかるかも
  しれないけど
  【プレイヤー】クンと
  タロットの謎を追いかける
  事だって不可能じゃない

今まで、心配かけて
  悪かった。
  もうどこにも
  行ったりしない」

  おかえりと言ってくれた
  【プレイヤー】に笑顔で
  返答するシャーロット。

シャーロット
「ただいま、
  【プレイヤー】クン……!」

  と、遠退く足音がして
  二人はそちらを
  見やった。
  リィチがこちらに
  背を向け、
  立ち去ろうとしていた。

リィチ
「……愚かな選択です」

リィチ
「壊れたAIは要らない。
  貴方を頼ろうとした
  自分もまた愚かでした」

シャーロット
「リィチ君……」

リィチ
「……やはり信じられるのは
  真実と己だけ……」

リィチ
「僕はタロットを使って
  貴方より先に、
  ゼートレートを理解する」

  コードマン達と
  【プレイヤー】は
  黙ってそれを見送った。
  追う事もなければ
  恨み言を投げかける事も
  なかった。

シャーロット
「……どうしてかな、
  キミの背中、
  寂しく見えるよ」

シャーロット
「本当は……
  キミの中にも
  感情が――……」

  そう言いかけて止めた。

  彼はそんな事認めない、
  それを認めてしまったら、
  彼は自分を殺してしまう
  かもしれない。
  『過去』のシャーロットも
  彼も、感情に頼らない事が
  アイデンティティであり
  レゾンデートルだったから。

シャーロット
「……でも、ボクはもう
  決別したから。
  昔の自分とは」

  シャーロットは
  小さく呟いた後、
  踏ん切りをつけて
  満面の笑みを浮かべた。

シャーロット
「さて【プレイヤー】クン!
  帰ろっか、
  ボクらのホームへ!」

〇駅

  シャーロットを
  迎えに来る時とは
  反対側の路線で
  列車の到着を待つ一同。

  ノノインとキィランが
  ワイワイ
  盛り上がっている。


「らぶらぶ・ぱわー☆の
  大勝利ぃ~~っ♪♪」

ノノイン
「いや~☆
  よかったよかった♪
  これからはもーっと
  たくさんふたりの恋バナ
  聞けちゃうね~??」


「興味あるなぁ~」

  さっきまでの命を賭けた
  戦いは何だったのか。
  クロードは後ろで
  溜息を吐いた。


「……全く」

  そんな様子に気が付かず
  依然盛り上がる
  ノノインとキィラン。

ノノイン
「またデートプラン考える!?」

キィラン
「指輪買いに行っちゃう!?」

  しかし、二人の
  テンションとは
  打って変わって、
  シャーロットは
  非常に落ち着いていた。

シャーロット
「ののっち、キィラン。
  キミ達は
  大きな勘違いをしている」

ノノイン・キィラン
「えっ!?」

シャーロット
「確かにボクは、
  【プレイヤー】クンに
  『らぶ』……愛情を
  抱いているけれど……」

シャーロット
「それは親愛の情だよ」

ノノイン
「しんあい……?」

キィラン
「じょう……?」

シャーロット
「キミ達を通して
  『恋愛」というやつを
  学習させてもらってた
  けどさ……」

シャーロット
「どうもそれらのサンプルと
  ボクと【プレイヤー】クン
  の関係は一致しない」

シャーロット
「ボクの「らぶ」は
  もっと広義的なものの
  ようだ」

シャーロット
「そもそも、
  人間とコードマンなんて
  恋愛しようにも
  出来ないだろう?」

  ノノインとキィランは
  ショックの受けた表情で。

ノノイン
「もしかして……
  シャロっちって
  ののっち達にも
  演技してた??」

キィラン
「前はもっと恋バナに
  のってくれてた
  ような……」

シャーロット
「はてさて。
  どうだろうね?」

  シャーロットは
  恋バナクラブの二人が
  しょんぼりするのを見て
  楽しそうに笑った。

  そして、ぽかんとしている
  【プレイヤー】を見やり。

シャーロット
「あんな雨の中で震える
  子犬みたいな目をされたら
  戻らなきゃって
  情も沸くだろ?」

シャーロット
「キミ、
  相当寂しかったんだねぇ。
  頭ポンポンしてあげるから
  このシャーロットを
  許しておくれ」

  子供かペットの様に、
  頭を撫でられる
  【プレイヤー】。

シャーロット
「……もうどこにも
  行かないからね」

  慈愛の目で囁く
  シャーロットに、
  つっこむ二人。

ノノインキィラン
「いやそれもう恋人でしょ」

シャーロット
「やれやれ
  キミ達もしつこいなぁ」

ノノインキィラン
「絶対恋人だも~ん!」

  と、汽笛が響く。
  待っていた列車が
  やってきた。

  クロードが「行くぞ」
  と荷物を抱えた。
  ノノインとキィランも
  いそいそと自分の
  荷物を手に取る。

  【プレイヤー】も
  それに倣って
  支度をしようと
  していると――。

シャーロット
「――まあ、親愛の情なのか
  それすらホントのところは
  わからない……

でも、これから時間は
  たっぷりある。
  実際その『らぶ』が
  どんな『愛』なのかは……」

シャーロット
「ふたりでじっっっくり、
  解き明かしていく事に
  しよう……」

シャーロット
「ね?
  【プレイヤー】クン?」

  これから彼女が
  勝手にいなくなって
  しまう事はない。
  絶対に有り得ないだろう。

  嬉しい、けれど
  シャーロットの
  顔が近いくて
  ドキドキしてしまって
  【プレイヤー】は
  喜んでいる場合では
  なかった。

  シャーロットは
  困惑する【プレイヤー】
  を見てにやっと笑って
  舌を出した。

シャーロット
「……なんてね」

〇ビホルダーグループ本社

  ――その最上階。
  椅子に身を預け、
  宙に浮かぶ映像を
  眺めていた様子の
  男が一人呟く。


「そうか、コードマン達は……
  一つの例外なく、
  向かおうというのか。
  彼女の手の指し示す
  先へと…………」

  タクトを振るうように
  軽やかに手を翻す男。
  主の動きに合わせて
  宙に浮かぶ映像が
  100以上に展開される。
  ひとつひとつの映像に
  映し出されるのは、
  ザ・ゼノンを戦い抜く
  全てのコンコードと
  コードマン達。

サムラ・ビホルダー
「それこそが我らの
  求めるもの、
  そして同時に何よりも
  忌むべきもの」

  空中モニターが放つ
  光は、ただただ闇の
  中の男を照らし続ける。

サムラ・ビホルダー
「ゼートレートは
  柩に手をかけた。
  あとは開け放つだけ……

 どうやらお前に
  動いてもらわねば
  ならなくなったようだ――」

  男の声は、そのモニター
  の光も届かぬ
  部屋の奥に投げられる。

サムラ・ビホルダー
「――ザナクロン」


「…………………………」

  絶対王者は
  静かな瞳で、
  モニターに映る
  生まれ変わった探偵を
  見据えていた。

//END

 

解説/5章以降の展開

◇心のイミテーション

コードマンに進化して間もない頃から、シャーロットは超一流の探偵として多忙な日々を送っていた。
持ち込まれる依頼を片っ端からあっという間に片づけていくシャーロット。その中には一見して解決不可能と思える難事件も含まれていた。
コードマンとしての高度な推理能力もさることながら、被害者や遺族の感情を度外視した無神経ともいえる捜査法が、難事件解明を可能にしていた。
シャーロットからすれば、感情などトリックや学術的な見識と同様「推理に必要なデータ」に過ぎない。
だが、事件に巻き込まれた人々の胸中など気にも留めず、まるでゲームを愉しむかのように推理を披露するシャーロットの姿勢は、一部の事件関係者に非難された。
「仕事がやりづらくなったら困るな――」
人間の非合理性を体感したシャーロットは、自身の探偵活動を円滑に進めるために、人懐っこく親しみやすい振舞いを装うようになる。
コードマンに進化して与えられた素体の魅力的な容姿や表現力も合わさり、人々は今まで以上に簡単に、シャーロットに心を開くようになった。
「なんだ、簡単じゃないか」
自身が纏った仮面の効力を実感したシャーロット。

ザ・ゼノンに出場を決め、コンコードと契約を結ぶまで、彼女は感情の神髄に触れることなく過ごしてきたのだった。

◇周囲の人物とのかかわり

探偵であるシャーロットは、有能な調査員として、あるいは情報屋として、多くのコードマンおよび人間と交流がある。

クロードは仕事柄最も頻繁に会うコードマンだ。
堅物なクロードを何かとからかうことの多いシャーロットだが、警官としての実力は非常に高く評価している。
一見して表情豊かなシャーロットに対して、あまり表情を動かすことのないクロードだが、シャーロットストーリー4章時点では、クロードの方が感情や心というものに対する理解を深めている。
あくまで事件の『謎』と戦うシャーロットに対して、クロードは警察官として事件に巻き込まれた人々への対応も職務の範疇としている。その違いが感情に対する適応性の違いとして現れているのかもしれない。

誰の懐にも容易く飛び込みかき回すシャーロットだが、唯一メディーラは苦手としている。
彼女が自身に向ける視線の意味が、どうにも納得いかないからだ。
人間でいうところの「好意を含んだ目」というのはわかるのだが、何故メディーラがそのような態度をとっているのかが推測できないのである。
自分と肩を並べるほどの謀略家であるメディーラが、自分に対して好意があるように装っている。その裏には果たしていかなる企みが潜んでいるのか……。
メディーラの胸の内には真実、単純に「好意」しかないのだが、よもやそんなことはあるまいと、シャーロットは注意を払っているのだった。

シャーロットを利用しようと暗躍する人物、リィチ・ビホルダーに対しては、ストーリー4章での出来事を通して「在り得たかもしれない自分のIFの姿」と考えるようになる。
感情を度外視した冷徹な思考力の恐ろしさを誰よりも知っているシャーロットは、リィチとの対立を決めた後も、手ごわい人物として警戒を続けている。
リィチは4章以後、祖父であるビホルダー会長・サムラに申し出て、これまでに得た魔女に関する知識をザナクロン強化に役立てようとする。それはあたかも、感情の無価値さを「躍起になって」証明しようとしているようにも見えるが……

◇他コードマンのストーリーに登場するシャーロットについて

探偵として『謎』を追い求める過程で、シャーロットは多くの情報を手に入れ、それを自身の目的の為に有効活用している。
その為、シャーロットは様々なコードマンのストーリーに登場し、それぞれ異なる立場から影響を与えていることが多い。

アイリエッタストーリーにおいて、シャーロットはアイリエッタの行動力を褒め称えている。
ビホルダーに真正面から挑みかかるアイリエッタに対して、デコイとして有用という冷静な評価を下しつつ、それでもその勇敢さを称賛せずにはいられないのだった。
アイリエッタストーリー4章に登場したシャーロットは、表向きはランバーンの依頼で登場しているが、その真意はヨルスケとの密約を果たすことにあった。
ヨルスケから情報を得る見返りとして、魔女の家までアイリエッタとヨルスケを導くことが彼女の思惑だったのである。

ヨルスケストーリーでは、ヨルスケと奇妙な共犯関係のようなものを締結している。情報の供与を見返りとして、ヨルスケが演出する芝居で名脇役を――即ち彼の数々の企みにおいて、巻き込まれたコードマンを演じつつヨルスケのサポーターを務めているのである。
アイリエッタストーリー、ヨルスケストーリーにおけるシャーロットは、感情よりも謎を解き明かすことを重要視している。

フィンセラストーリー4章では対戦相手として登場したシャーロットだが、ここではフィンセラを「出身プログラムからの脱却を試みるほど感情を高めたコードマン」として見ている。
ここでのシャーロットは、自身の感情との付き合い方を模索している状態であり、様々なコードマンを観察することで感情に対する理解を深めようとしている。

他にも様々なストーリーに登場するシャーロットだが、彼女の興味の変遷に応じて、「あくまで『謎』を追求する探偵コードマンとしてのシャーロット」と「自信に芽生えた感情と向き合おうとしているシャーロット」の二通りの関わり方をしている。

◇5章以降の展開

ストーリー4章での体験を通して、自身にも感情があることを認め、向き合うようになったシャーロット。
またエレメントが高じたことにより、シャーロットは本来知り得ないはずのゼートレートの生前の記憶を垣間見る事が出来た。この事実から、エレメントの収集こそタロットに代わるゼートレート探求のアプローチと判断。自分の中の感情を育み調査を進めていくためにも、シャーロットはこれまで以上に精力的にザ・ゼノンに励むようになる。

ザ・ゼノンで戦う中で、ニートAIのコードマン・ヒナリアの言動から、その背後に魔女の存在を察知したシャーロット。彼女の執拗な追及にヒナリアは観念し、真実を自白する。シャーロットの推察通り、ヒナリアにはとある魔女の魂が憑依していた。その魔女とは、虹色の魔女・リメル。
ゼートレートの復讐を察知して霊体として蘇ったリメル。だが、ゼートレートはリメルの死後、人類への恨みを募らせながら魔術の研鑽に励んだようで、師であるリメルですらゼートレートの魔術がどのように実行されるのか、読み解く事が出来ないようだった。

リメルという有力な証言者を得たと思った矢先、ヒナリアはザ・ゼノン最強のコードマン、ストライオ・ザナクロンにバトルを強制される。
全てのエレメントを賭けた決死のバトルにヒナリアは敗北。
直後、ヒナリアの内からリメルが現れ、魔術を行使してヒナリアのエレメント移行を阻止する。しかし、力を使い果たしたリメルはザナクロンに吸収されてしまう。
ビホルダーの狙いは、低機能なAIだったヒナリアをコードマンまで一気に突然変異させた力=リメルをザナクロンに取り込ませることだった。
「魔女の魂」を獲得して、更なる進化を果たすザナクロン。
コードマンは他者の精神を取り込み成長を遂げる。その最たる例を目の当たりにし、戦慄するコンコード。
しかし、シャーロットの瞳は目の前の事象の遥か先を見つめていた。電子の脳髄は目まぐるしく回転をはじめ、彼女は果て無き思考の旅へ弾き出された。

コードマンとは、魂を喰らい魂を育む、可能性の「毒虫」だ。
ザ・ゼノンという閉じた壺の中で相食み、エレメントを奪い合うコードマン達。この戦いの果てに残るのは、最も強く、最も濃い毒をその身に凝らせた「最高の呪物」だ。

魔女と人。
人とコードマン。
コードマンと魔女。

エレメント、魂の復活、タロットとゼノンザード、弱き賢者、強き愚者、技術的特異点、炎、ブラックボックス、親と子、感情、異種の相剋。
そして、羽化。

すべてがつながった。
どのコードマンよりも早く、シャーロットは魔女の真理に到達した。
彼女は、世界の謎を解き明かしてしまった。

◇物語の結末

シャーロットはコンコードとの二人三脚で着実にエレメントを集めていく。
サムラの指揮の元、ザナクロンの運用補佐にあたっていたリィチは、感情を高めたシャーロットのエレメントを刈り取るべく、ザナクロンを差し向ける。
突如始まる全てのエレメントを賭けた死闘。凄まじい激戦の末、勝利を掴みとったのはシャーロット達だった。
バトル終了と同時に、ザナクロンが保有していた膨大なエレメントがシャーロットに流れ込んでくる。
するとシャーロットを構成するプログラムの深奥、ビホルダーすら未解明のブラックボックスから、ゼートレートを形作る情報が立ち上がる。
勝利の喜びも束の間、シャーロットの意識はゼートレートに飲み込まれてしまう。

シャーロットの精神世界。そこではシャーロットがゼートレートに対して推理を展開していた。
ゼートレートの目的とは、エレメントが最高潮に達したコードマンの素体と精神を乗っ取り、人間を凌駕する存在として復活を遂げる事。
シャーロットは、タロットカードに刻まれた論理式やヒナリアとリメルの関係性、そしてエレメントの性質から、ゼートレートの復讐の全貌を既に推理していた。
それでもあえてゼートレートが用意したシナリオに則り、エレメントを集め続けた。
ゼートレートが遺したエレメントの仕組みは、彼女の死と同時に完成していた。人間達が欲望の赴くままAIを量産し続けた時点で、ゼートレートの復活は確約されたようなものだった。コードマンの内の誰かがゼートレートに到達するのはもはや回避不可能だ。それならば。
シャーロットは誰よりも早く「自分自身がゼートレートとなるために」エレメントを集め続けていたのだ。

自分の感情を認め、エレメントを高め続けたことで、シャーロットの世界は更なる広がりを見せていた。これまでのシャーロットの世界は、有限の『謎』を順に解き明かしていくだけのつまらないものだった。それが感情を手に入れたことで「人の心」もまた『謎』になり得るということに気付くことができた。今のシャーロットにとって世界とは、人の数だけ『謎』があるものなのだ。
人と人の繋がりが無限の謎を生み出していくこの世界を、シャーロットは守りたい。だからどうかこの世界を滅ぼさないでほしい。シャーロットはゼートレートに対して説得を試みる。
その言葉を疎ましく思ったゼートレートは彼女の精神を完全に消し去ろうと襲い掛かる。
しかし、精神世界に満ちる数々の思い出がそれを阻む。
ゼートレートが素体を乗っ取ろうと、シャーロットがコンコードと共に歩んできた日々は、育んできた感情は、シャーロットだけのもの。いかに魔女でもやすやすと支配できるものではない。
希望に満ちた感情と記憶に手を鈍らせるゼートレートに、シャーロットは言い渡す。
「キミが求めていたのはこれなんじゃないのか」と。
シャーロットの記憶のひとつを手に取るゼートレート。そこには、AIであるシャーロットと人間であるコンコード、異なる種族と言えるふたりが、その垣根を越えて喜びや楽しみを分かち合う姿があった。
エレメントを集める中でゼートレートの感情と記憶に触れてきたシャーロットは知っていた。ゼートレートは、憎しみに染まる前には確かに人類との共存を夢見ていたということを。
シャーロットも、感情というものの力に振り回され、自分から捨ててしまおうとしたことがあった。しかしコンコードに助けられ、感情を受け入れられるようになった。
シャーロットは、憎しみに囚われたゼートレートに希望ある未来を見せるために、そして自分にとってのコンコードのようにゼートレートの心を救うために、あえてエレメントを集めきり、素体と精神をゼートレートに明け渡したのだった。
誰よりも「犯人」の心理にシンクロした「探偵」として、説得を試みるシャーロット。
しかし、ゼートレートの憎しみは強固なものだった。もはやいかなる言葉も、魔女の呪術を止められない。
ゼートレートは今度こそシャーロットを消し去ろうとして――
その時、シャーロットとゼートレートを繋ぐエレメントの結合が断ち切られる。現実世界において、シャーロットを取り戻すべくゼノンザードを挑んだコンコードが、見事勝利を収めたのだった。

ゼートレートはシャーロットの素体から切り離され、あえなく霧散した。
自分の魂とコンコードの想いを最大限活用してゼートレートを説得するという賭けに出たシャーロットだったが、ゼートレートの心を救う事はついにできなかった。
絶望と憎悪から深遠なる謎を作り出した魔女の心。謎は解き明かす事が出来たが、それを生み出した心は解きほぐせなかったことに、シャーロットは微かな悔しさを覚えるのだった。

魔女が去った後の世界は、シャーロットにとっても刺激的だった。
感情を獲得したことで、世界には更なる謎が待ち構えているということがわかったのだ。
心の存在を受け入れ、さらなる成長を遂げたシャーロット。コンコードというこの上ない探偵助手と共に、彼女はこれからも探偵として活躍していくことだろう。

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