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闘え!レスキューAI!

公開済みストーリー・相関図

公開済みストーリーをYouTubeで公開中!!

1章 レッツ!レスキュー!

2章 救え!迷子AI!

3章 暴け!海上都市!

4章 闘え!レスキューAI!第1話~第2話

相関図

▼クリックして拡大▼

 

第4章 闘え!レスキューAI! 第3話

  素体を造る機材と
  素体を解体する機材が
  混在している。
  
  部屋の奥には
  巨大なプレス機がある。
  その脇に、人間型素体の
  頭部・胴体・手足、
  果ては鳥の翼・巨大な
  蜥蜴の足・悪魔の尻尾と
  言ったアトラクション
  施設のAIに使用される
  ようなパーツが一緒くた
  になり放置されている。

  部屋の中央で、
  UR-Dは息を切らす。
  対峙するは
  キズキが救助AI『UR』
  シリーズの廃棄パーツを
  寄せ集め生み出した
  『UR-X』。


「れれレすきュー……
  れスきゅ……ゥ……」

  バチバチッと音がして、
  自立できるエネルギーが
  切れたのか
  UR-Xは床に倒れた。

  UR-Dは不気味な自分の
  分身とのバトルを制した。

【プレイヤー】
「やった、倒した……!」

  UR-Dの死を回避した
  【プレイヤー】は
  安堵したが、
  UR-Dはやりきれない
  表情だった。


「私をからかう為だけに……
  わざわざこんな事を――」

  そう、キズキを
  睨みつけようとした。
  しかし、
  UR-Dの背中に、
  衝撃が走る。

UR-D
「うぐっ!?」


「勝ったからって
  油断しとったら
  いかんよ~?」

  強制ゼノンザードの様子を
  側で見ていたキズキ。

  指の間に挟んだ『鍼』を
  見せながら
  にやにやと笑う。

キズキ
「ホラ。
  また同じパターンで
  ピンチになったにゃ~☆?」

  UR-Dの背中には
  キズキが飛ばした
  鍼が突き刺さっていた。

UR-D
「ぐぐっ……動けん……っ!」

【プレイヤー】
「UR-D!!」

  と同時に【プレイヤー】
  にも衝撃が走った。


「対人用のテイザー銃だ。
  暫く動けまい。
  これ以上
  邪魔はさせない……!」

  いつの間にか
  バウアーがララカを
  引き連れ
  すぐ側まで来ていた。

  【プレイヤー】は床の上
  からララカに手を伸ばす。

【プレイヤー】
「う……っ」


「…………………………」

UR-D
「ララ、カ……ッ!」

  こんなに近くに
  ララカがいるのに、
  その手を取って
  逃げる事が出来ない。
  無力感がUR-Dと
  【プレイヤー】を襲う。

  キズキは「にゃは」と
  ご機嫌な笑みで
  言い放つ。

キズキ
「ウルちゃん達はそこで
  指をくわえて見とき~?
  全く新しいタイプの
  バイオロイドの
  誕生を……!」

UR-D
「バイオ、ロイド……」

UR-D
「前時代の……
  人権を無視した、
  禁忌の研究だ……
何故だ、
  何故そんなものを
  今……っ?」

キズキ
「キズキちゃんに
  聞かれてもなぁ。
  キャロウに聞いてくれた
  方が確実なんやけど
……ここだけの話、
  ビホルダーの派閥とか
  方向性とか、大企業様の
  内部事情が複雑に
  絡み合ってるらしいで?

キズキちゃんの推測やと、
  ウルちゃんの言うような
  時代の波に逆らった倫理違反
  の計画にビホルダーから
  援助があんのは――……

コードマン如きAIが
  世界の中枢を掌握する社会が
  気に喰わん――

――そんな考えを持つ
  人間が一定数おるから
  やなぁい?」

キズキ
「だからバイオロイド……
  ヒトの中にAIを取り込んで
  AIより上に
  立とうとしよる」

  長々と考察を語った
  キズキは
  子供の様に身体をくの字に
  してバウアーに尋ねる。

キズキ
「どーかな?
  バウアーのおっさん?」

バウアー
「……………………。
  私のような
  末端が知る筈……」

キズキ
「えー?
  答え合わせ無しぃ??

――ま、そやにゃ~。
  おっさんも上の事情とか
  どーでもいいもんな。
  娘さんさえ救えれば」

  突然出てきた話に
  UR-Dは戸惑う。

UR-D
「娘……? 救う……?」

キズキ
「あ? 知らんかったっけ?
  このおっさんの娘さんな、
  もう長い事病気なんよ。
  医者からも
  匙投げられててな~

でも、愛しい愛しい娘や。
  簡単には諦められん……。
  だから、哀れなおっさんは
  バイオロイドに賭けた」

  命の話を、キズキは
  茶化しながら語る。
  ミュージカルの演技の様に
  たっぷりと叫ぶ。

キズキ
「ララカちゃんと
  ひとつになれば
  バイオロイドとして、
  娘さんは
  生き延びられる……っ!」

  UR-Dは、
  愕然とした。

UR-D
「それは、つまり……」

キズキ
「うん。ウルちゃんが
  ララカちゃんを
  連れて帰ったら
  おっさんの娘は死ぬ」

UR-D
「…………ッ!!!!」

キズキ
「そっかそっか。
  ごっめーん。
  言い忘れてたわぁ」

キズキ
「あ、でもこれで
  諦めてくれるよなぁ?」

キズキ
「レスキューAIたる
  ウルちゃんがヒトを
  見殺しにするなんて……
  あっていい筈
  ないもんなぁ……?」

  キズキの言う通りだった。

  UR-Dは人命を救う為に
  生まれたAI。

  AIを優先し
  人命を見捨てる事など
  出来る筈がなかった。

UR-D
「…………!!!!」

キズキ
「あははっ!
  まあまあ、安心しぃや。
  ウルちゃんにそんな
  キッツイ決断させんよ」

キズキ
「ウルちゃんが動けん間に
  『手術』は終わらせるし?」

  AIとしての根源的な
  プログラムを
  自ら否定する訳ではない。
  しかし、ララカを
  諦めきれるはずもない。

UR-D
「待て……っ
  待てぇぇ…………ッ!!」

  それでも、きっと、
  何か別の方法がある筈だ。
  UR-Dは懇願するように
  声を出す。しかし、
  キズキはそれを無視した。

キズキ
「じゃ、
  大人しくしときや」

  無情にもUR-Dから
  離れていくキズキ。
  るんるんと
  ララカに近づいていく。
  両手を広げ我が子に
  語り掛けるように。

キズキ
「行こか、ララカちゃん」

  ニッコリと微笑む。
  そのキズキの身体に、
  テイザー銃が
  撃ち込まれる。

  UR-Dも、
  【プレイヤー】も
  驚愕した。

  高圧の電気を受けた
  キズキはガクッと
  倒れ込み、床で呻く。

  同胞の反逆に
  驚くキズキ。

キズキ
「な、なんで――……
  ――バウアー……ッ!?」

バウアー
「貴方は
  ヌルすぎるんですよ……。
  自分が造ったAIだから」

バウアー
「こいつらは、
  この元コードマンを追って
  また邪魔しに来た……

潰せる内に
  ぶっ潰さないと、
  また邪魔してくるに
  決まっている!」

バウアー
「娘の為に、
  こいつらは潰さないと
  ダメなんです……!!」

  追い詰めている筈の
  バウアーが、
  追い詰められている者
  の表情で訴える。

キズキ
「ハァ……っ?
  おっさん……
  ナニする、つもり――……」

  と、ラボの扉が開く。
  屈強な警備AIが2体
  部屋に入ってきた。

  巨大なアームを
  UR-Dに向け進んでいく。
  その奥には、
  ラボ付属のプレス機が
  設置されている。

  【プレイヤー】の背筋が
  冷たくなった。

【プレイヤー】
「や、め…………!!」

UR-D
「ぬう……っ!?」

  警備AIはアームで
  UR-Dの胴体と
  腕を掴むと、
  【プレイヤー】の予想通り
  そのままプレス機に
  直進していく。

【プレイヤー】
「だめ……!」

UR-D
「…………ッッ!!」

  バウアーはギョロついた目
  で、残酷に言い放つ。

バウアー
「娘の為なんだ…………」

  キズキは床上で
  身をよじる。

キズキ
「やめぇ、ボケ…………ッ!
  ウチの、ウチの
  『作品』やぞ……ッッ!!!」

  バウアーの耳には
  もう誰の声も
  聞こえない。
  娘の延命に邪魔な存在を
  排除する。
  娘だけが、今の彼の
  生きるよすが。

バウアー
「消えてくれ――――」

  警備AIがごみでも
  捨てるように
  UR-Dの身体を
  プレス機前の
  ベルトコンベア上に倒す。

  すると重量を感知した
  プレス機が作動し
  UR-Dをプレス機下へと
  運んでいく。

  やや遅れて、鉄の塊が
  ガション、ガションと
  機械的な上下運動を
  始めた。

UR-D
「ク…………ッッ!!」

【プレイヤー】
「こんな時に
  動けない……!!」

  キズキと【プレイヤー】は
  這いずるようにして
  プレス機に向かう。
  だが今の二人の状況では
  到底間に合わない――。

**************


ララカ
「………………………………」

  ララカは、ぼうっと
  それを見ていた。

ララカ
「………………………………」

  ララカにはもう
  心はない。
  コードマンでなくなった
  時に消えてしまった。
  エレメントを溜める
  タンクの底が抜けて
  しまった。
  彼女はもう二度と
  感情を持てない。

  だが、
  学習は出来る。

  目の前で破棄されそうな
  コードマン・UR-D。
  彼の下でララカは
  学習した事がある――。

ララカ
「…………レス、キュー」


**************

  みな、愕然とした。

  誰が思うだろう、
  心を失ったAIが
  UR-Dの元へ
  飛び出していくなどと。

  そして、自らを犠牲に
  救うなどと。

  ララカは自分の身体を
  プレス機の下に
  潜り込ませ、
  UR-Dを押し出した。

ララカ
「ウルドゥ、レスキュー
  ウルドゥ、助ケル」

ララカ
「ララカ、ウルドゥ、好キ」

UR-D
「………………ッッ!!!
  ララカっ――――」

  ――ゴシャッ。
  プレス機が、
  ララカの身体を潰した。

//END

 

第4章 闘え!レスキューAI! 第4話

〇DR.キャロウの研究施設・キズキのラボ

  対象物を『廃棄』した
  プレス機が停止した。

  UR-Dと【プレイヤー】
  は目を見開いたまま
  呆然としている。

【プレイヤー】
「そん、な…………」


「何故だ…………?
  応えてくれ、ララカ……」

UR-D
「どうして、
  応えてくれない……
  ララカ…………っ」

  キズキもまた
  愛する我が子を、
  バイオロイドの
  実験体を喪失し、
  呆然自失となっていた。


「ウチの……
  愛しい子が……。
  …………あはっ、
  はは、ははは…………」


「そんな……ッ!?」

  バウアーの
  声が響く。
  がくがくと震え、
  現実を受け入れられず
  首を横に振り続ける。

バウアー
「素体がこんなに壊れて
  しまったら……
  娘は……っ、
  娘の命はもう――――」

バウアー
「あああああああああああああ
  あああああああああああああ
  ああああッッ!!!!!!」

  ララカの二度目の死。

  一度目はコードマン
  として。
  二度目は素体と僅かに
  残された基礎的な
  AIプログラムを失って。

【プレイヤー】
「………………っ」

  【プレイヤー】は
  悲しみに圧し殺されそうに
  なりながらも
  身体を動かした。

  キズキのかすれた笑い声と
  バウアーの狂った叫びの中
  プレス機の側で
  絶望している
  UR-Dの元へと這った。

  やっとの事で
  側に辿り着くと、
  その身体に刺さった
  キズキの鍼を抜いた。

  これでUR-Dは動ける。
  しかし――。

UR-D
「………………………………」

UR-D
「………………………………
  ………………………………
  ………………………………」

  沈黙したまま動かない。

  【プレイヤー】は
  UR-Dの身体を
  揺り動かした。

【プレイヤー】
「UR-D……っ!」

  すると、やっと
  UR-Dが反応を返す。

UR-D
「……ここにいた
  ララカが……
  唯一無二だった……」

UR-D
「私は……っ
  何度壊れたって
  よかった……!
  既に何度も壊れて
  いるのだから……!

なんで私を助けたんだッ、
  ララカぁ……ッッ!!」

  悲痛な叫びが
  【プレイヤー】の心に
  刺さる。

【プレイヤー】
「……きっと、
  レスキューしたかったんだ」

【プレイヤー】
「UR-Dに
  助けてもらったから」

UR-D
「そうだとしても……
  私は――――……」

バウアー
「そうだ……。
  なんでお前が
  壊れていないんだ……」

  【プレイヤー】と
  UR-Dのは声の方を
  見やった。

  声がかすれた
  バウアーが、何が
  おかしいのか
  アヘアヘと笑いながら
  言った。

バウアー
「私は悪くない。
  お前が壊れるべきだった」

バウアー
「全部お前のせいだ。
  お前のせいで
  全てがパァだ。
  だからもう……
  ――全部壊れてしまえ」

  警備AIの呼び出しに
  使った端末を
  またタップする。

  すると、部屋の隅にあった
  十数体のAIが動き出す。
  荒事になることを想定し
  キズキたちは
  ビホルダー本社から
  プロトタイプなる
  対戦用AIを借りていた。


「……………………」

【プレイヤー】
「…………!」

バウアー
「――やれ」

  そう命令が下ると、
  AI達はラボの壁を
  殴り始めた。
  柱も床も機材も
  躊躇なく壊していく。

  バウアーは
  この場の者全てを巻き込み
  死ぬ気だ。

【プレイヤー】
「に、逃げなきゃ……、
  UR-D、立って!」

  UR-Dはまだ絶望から
  抜け出しきれていない。

  【プレイヤー】は
  UR-Dの身体を
  引っ張るが、
  先程のダメージと
  そもそもの体格差で
  連れ出すのは
  無理そうだった。

  そうしている内に
  対戦用AIの内の1体が
  こちらに向かってきた。
  その姿からこのAIが
  対戦用であることは
  【プレイヤー】にも
  理解出来ていた。

  コードマンを壊す……
  いや殺す方法と言えば
  エレメントを奪う事に
  決まっている。

  この対戦用AIはUR-Dに
  強制ゼノンザードを仕掛け
  そして殺す気なのだ。
  今のUR-Dはまともに
  バトルできる精神状態では
  ない。

  【プレイヤー】は焦り、
  もう一度叫んだ。

【プレイヤー】
「UR-D!!」

UR-D
「……あいつを止めるのも、
  レスキューAIの仕事……

そんな事……
  十分に理解できている……
  しかし、しかし…………!」

UR-D
「くそっ……
  くっそぉおおおぉぉぉ!!」

???
「――あなたらしく
  ありませんね」

  誰かが、
  対戦用AIからUR-D
  を庇うように、
  間に割って入った。

???
「辛い時も苦しい時も、
  人々の幸福の為なら
  頑張れる……
  それがあなたでしょう――」

  スラッとした脚、
  職業を象徴する廉潔な
  白い衣装、揺れる黒髪。


「――ウルたん…………?」

  UR-Dの友人、
  アイリエッタ・ラッシュ。
  UR-Dは目を強く発光させ
  驚く。

UR-D
「アイリん…………!?
  何故君がここに――」

  その質問は
  もう一人の闖入者に
  かき消されてしまう。


「とりゃあああっ!」

プロトタイプ
「……ジジ……ジジジッ」

  対戦用AIの一体に
  キックを入れる
  シャーロット。

UR-D
「シャーロットまで……!?」

  しかしその程度の
  物理攻撃は効果がない
  のか再び動き出すAI。

シャーロット
「やーっぱ、
  ボクの非力な乙女キック
  じゃ倒れてくれないか」

  シャーロットは
  AIを牽制しながら
  UR-Dに声を投げかける。

シャーロット
「――UR-Dっっ!
  ララカが守ったキミを、
  キミが無駄にしていいの?」

UR-D
「……ッッ!!!!」

  このまま瓦礫の
  下敷きになるなり
  エレメントがゼロに
  なるなりすれば
  ララカの行為は
  無駄になってしまう。

アイリエッタ
「シャーロットさんの
  言う通り。
  ララカさんは、こんな、
  職務を放棄するウルたんを
  見たいでしょうか?」

  アイリエッタは
  アウロスギアを
  構えながら
  後方のUR-Dに尋ねる。

アイリエッタ
「あなたに感銘を受けたから、
  あなたをレスキューしたのでは
  ないですか……?」

UR-D
「ウル…………ッ」

  【プレイヤー】は
  二人の助太刀を得て、
  再度叫ぶ。

【プレイヤー】
「立って、UR-D!!」

UR-D
「ウ、ウウウ~~…………ッ」

  UR-Dの心の中にある
  悲しみ、怒り、迷い、
  不甲斐なさ、憎しみ、
  虚無、絶望――。

UR-D
「ウウウウウウウウウウウウ
  ウウウウウウウウウウウウ
  ウウウウウウウウ…………」

  UR-Dは
  それら全てを振り払う。

UR-D
「ウルオオオォォォォォオオ
  オオオオオオオオオオオオ
  オオオオオオオオ!!!!」

  ――そしてアウロスギアを
  天に掲げた。

  【プレイヤー】も即座に
  UR-Dを理解し
  アウロスギアを取り出す。

UR-D
「この勝負、
  受けて立つッッ!!」

  UR-Dは立ち上がった。

  アイリエッタと
  シャーロットは
  レスキューAIの復活に
  笑みを漏らした。

  それぞれAIと対峙する。

シャーロット
「ふふん。ボクら、
  ゼノンザードなら
  負けないよ?」

アイリエッタ
「命を守る為に
  自分自身の命を守る……。
  ……あれから私は
  覚悟を決めました――」

アイリエッタ
「――ビホルダーと戦う。
  だからこんなところで
  負ける訳には
  行かないのです」

シャーロット
「アイリ君もUR-Dも
  復活だね!」

  UR-Dのアウロスギアに
  エレメント100%ベット
  の強制ゼノンザードの
  知らせが表示される。

UR-D
「ウルオオオォォォォォオオ
  オオオオオオオオオオオオ
  オオオオオオオオ!!!!」

UR-D
「こいつらを止める!
  そして、研究所にいる
  全ての人々を救う!!」

UR-D
「ララカが愛してくれた
  レスキューAIとして!!」

  ――UR-Dと対戦用AI達の
  バトルが開始された。

**************

バウアー
「そ、そんな……っ!?」

  3体のコードマン達は
  対戦用AIから挑まれた
  強制ゼノンザードに
  次々と勝利していった。

  そして今、最後のAIを
  破り、壊滅させた。

UR-D
「終わりだ……!」

  UR-Dはバウアーを
  見据えて言った。

バウアー
「こんな、こと……!」

バウアー
「みんな死ぬんだよ!!
  そう決まってんだよ!!」

  乱暴に端末を操作する。
  すると先程UR-Dを
  ベルトコンベアまで
  運んだ警備AIが
  動き出し、柱に
  体当たりし始めた。

シャーロット
「往生際が悪いよ。
  観念したら?」

  シャーロットが
  バウアーに
  近づこうとする。

バウアー
「来るな来るな、
  来るなァァァァッッ!!」

  腕を振り回して
  逃れようとするバウアー。
  コードマン達は
  憐れむような目つきで
  それを見ていた。

  と、
  ピシッ……と
  嫌な音が聞こえた。

  見ると、
  警備AIが体当たりして
  いた柱に、亀裂が
  入っていた。

  その音を皮切りに
  ビシ、ビシィッと
  亀裂がどんどん
  大きくなっていき、
  ついには柱がずれた。

シャーロット
「……!!
  これってまずい……!?」

【プレイヤー】
「脱出しなきゃ!!」

  その内建物中から
  轟音が聞こえ始め、
  瓦礫が降ってき始めた。

バウアー
「ひゃはッ!!
  やった、やったぞぉぉぉ!!」

  無理心中の計画が
  再び動き始め
  狂喜するバウアー。
  だがアイリエッタが
  それを阻止する。

アイリエッタ
「――させませんッ」

  物怖じせず歩み寄り、
  身体を拘束する。

バウアー
「なッ――」

  看護師AIとして
  いつも所持している
  注射器を取り出すと
  バウアーに打った。
  するとすぐに彼は
  大人しくなった。

アイリエッタ
「鎮静剤です。
  こんな事もあろうかと
  持ってきていたのですが
  正解でしたね」

シャーロット
「……アイリ君、意外と
  力技を使うんだね……
  ――っと!」

  大きめの瓦礫を
  間一髪で避ける
  シャーロット。

  あまり時間はなさそうだ、
  シャーロットと
  アイリエッタは
  目くばせし、
  ふたりでバウアーの
  身体を抱えた。

**************

  【プレイヤー】とUR-D
  は、崩れそうな研究所内で
  悲しみに暮れへたりこむ
  キズキの前に立っていた。

キズキ
「……ララカちゃんが……
  ……ララカちゃんが……」

  ブツブツと、
  我が子の死を嘆き続ける。

UR-D
「いつまでもここにいては
  君の命が……」

キズキ
「もっと素敵にしてあげる
  予定やったに……
  それも全部、
  なくなってしもうた……」

  バイオロイドにしてあげる
  のも、キズキにとっては
  創造者としての
  優しさだった。

  元コードマンという
  何の役にも立たないAIに
  次のステージを与えて
  あげるつもりだったのだ。

UR-D
「……急ごう。完全に
  崩れる前に……」

キズキ
「ララカちゃんを
  置いて行ける訳ない……。
  愛しい愛しい
  我が子やもん……」

  自分もララカの死を嘆き、
  悲しみに浸りたい。
  だが、UR-Dは気持ちを
  押し殺し、レスキューAI
  としてキズキの手を取る。

  しかし、その手は
  振り払われた。

キズキ
「行くんやったら
  ウルちゃんだけで行き。
  キミの素体まで潰れたら
  キズキちゃん浮かばれんわ」

  この人はどこまで
  素体至上主義なのだ、
  UR-Dは
  一瞬苛立ちを覚えた。

UR-D
「一緒にここを出るんだ!!」

キズキ
「ウルちゃんにとってウチは
  ララカちゃんを連れ去った
  『敵』やん?
  ほっといて」

UR-D
「命に、敵も味方も関係ない!」

キズキ
「そんなん綺麗事よ――……、
  ……!?」

  UR-Dは、苛立ちを抑え
  強引にキズキの身体を
  抱え上げた。

キズキ
「は、離さんか――」

UR-D
「確かに君が言った通り、
  感情を押さえて
  使命を全うするのは苦しい!
  だが――――」

UR-D
「どんな人も、どんなAIも
  平等に救う。私は、
  スーパーレスキュー!!
  それが私の存在理由!!」

UR-D
「UR-Dは
  UR-Dなのだぁぁっ!!!」

UR-D
「ウルオオオォォォォォオオ
  オオオオオオオオオオオオ
  オオオオオオオオ!!!!」

  キズキの涙も引っ込む程の
  大きな雄たけび。

  それが崩壊する研究所の
  轟音の中響く。

**************

  研究所の外で
  不安そうに待つ
  シャーロットと
  アイリエッタ。

  やがて彼女らは
  上空を見上げ安堵の
  表情を浮かべる。

  キズキと【プレイヤー】を
  抱えたスーパーレスキュー
  が、こちらに向かって
  降りてくるのが見えた――。

//END

 

第4章 闘え!レスキューAI! 第5話

〇病院・病室

  心電図の音が規則的に
  続いている。
  個室にただ一つの
  白いベッドに、
  身体中に管を付けた
  色白の少女が
  横たわっている。

  と、看護スタッフが
  入室する。
  スタッフは「ああ」と
  声を漏らした。

看護師
「――アイリエッタ。
  またその子の
  様子を見に来たの?」


「……ええ」

  ベッド脇で、
  アイリエッタは
  医療機器からデータを
  読み取っていた。
  投薬による体調の変化
  などを事細かに数時間
  単位でチェックし
  治療法を探っていく。

  少女が来てからというもの
  アイリエッタは
  不治の病の研究に
  没頭していた。

アイリエッタ
「私は諦めません。
  今はまだ、治療法が
  見つかっていないだけ……

いつか必ず治します。
  私は医療を司る
  コードマンとして
  手を尽くす」

アイリエッタ
「でないと……
  無理に連れ帰ったあの人は
  いつまでも
  自分を責め続ける」

  娘を愛するが故
  犯罪に手を染めた父親を
  思い浮かべ、
  アイリエッタは言った。

アイリエッタ
「ふたりを救う為に、
  私は私の出来る事を
  しなければ」

  データを纏め、
  類似する症例を洗い出し
  主治医に別のアプローチを
  提案する。
  明日は薬学に精通する
  コードマンとアポが
  取れている。
  未だ認可されていない
  医薬品の中に可能性が
  ないか尋ねてみるつもりだ。

  看護スタッフが
  日課の検査を終え、
  退室した後、
  アイリエッタはぽつりと
  呟いた。

アイリエッタ
「…………本当は、
  『もうひとり』
  救いたかった、のに……」

  ――にシャーロットが
  訪れていた。


「じゃーんっ!
  UR-Dの大好きな
  『クワガーマン』の
  フィギュア!
  レアものだよ~~!」

  古ぼけたパッケージを
  どーんとUR-Dの
  目の前に掲げる。
  【プレイヤー】は
  一目見て、年代物で
  希少価値が高そうだと
  感じた。
  これならあるいは……、
  【プレイヤー】は
  UR-Dの表情を覗く。


「ああ……、ありがとう。
  私の好きな映画を
  知っているとは……
  流石名探偵シームズ……」

  覇気のない声。
  【プレイヤー】、
  そしてシャーロットも
  肩を落とした。

シャーロット
「……物じゃ
  心は晴れないか……」

シャーロット
「……正直、ボクだって
  辛いもん。悔やんでる
ボクの到着が
  もう少し早ければ
  ララカは
  助かったんじゃないかって

ボクがララカを求めてた
  のはセネトの死や
  エレメントの真実、
  ザ・ゼノンの裏側を……」

シャーロット
「――ビホルダーグループの
  闇を暴く為だ」

  シャーロットは
  沈痛の面持ちで語る。

シャーロット
「ボクは、
  キミ達がララカ奪還に
  向かった裏で、
  ビホルダーの本丸に
  近づこうとした

ランバーンと同じさ
  キミ達を
  『陽動』として利用した」

シャーロット
「――そこで、
  アイリ君と会った
アイリ君はセネトの死の
  真相について調べていた。
  ララカについて話すと
  一度会ってみたい、って……」

  シャーロットの表情が
  陰り出す。

シャーロット
「……アイリ君の
  一言が無ければ
  ボクはあそこに出向く事も
  無かっただろう」

シャーロット
「ああ……。
  ボクは認めたくない
  のかもしれないな……
『間に合えばよかったのに』
  というより、
  『調査の為にあの子を犠牲に
  してしまったかもしれない』
  事実を」

  そして乾いた
  笑いを漏らす。

シャーロット
「ハハッ。こんな感情……
  ボクにもエレメントが
  溜まってきた証拠かな?」

【プレイヤー】
「自分も悔しい……」

シャーロット
「キミも身動きが
  取れなかったんだろう?
  ボクが言うのもなんだけど
  自分を責めない方が良い」

  シャーロットは
  複雑そうな顔で
  続ける。

シャーロット
「……ララカはああなって
  しまったけど、
  ランバーンの作戦は
  上手くいった

『ニヒト計画』の首謀者
  DR.キャロウは捕まった」

シャーロット
「――キミ達のお陰で
  救われた人もいるんだ」

  そうは言われても
  【プレイヤー】は
  喜べなかった。
  それは良い事だけれど、
  一番救いたいと願って
  いたララカを救えなかった。

  UR-Dが何にも
  反応しないのも、
  今は何事においても
  後悔と苦しみだけが
  心を支配しているからだ。

  シャーロットは空気を
  変えようとわざと明るい
  声を出す。

シャーロット
「それにしても
  ランバーンの奴。
  作戦成功したんなら
  連絡ぐらい寄こせって
  話だよね~!

結局キズキも行方を
  くらましちゃって
  『ニヒト計画』も全貌は
  分からず仕舞いだし!」

  ――結局、場が明るく
  なる事は無かったが。

  シャーロットが溜息を
  ついていると、
  玄関チャイムの音が
  鳴った。

シャーロット
「ん?
  お届け物……?」

  沈んでいるUR-Dに
  変わって、【プレイヤー】
  が応対に出向く。

  帰ってきた【プレイヤー】
  は大きな荷物を
  抱えていた。
  それは子供が一人
  入りそうなくらいの
  宅配用コンテナだった。

シャーロット
「……何? 通販??」

  【プレイヤー】は
  誰もそんな気分じゃない
  でしょ、と心の中で
  突っ込んだ。

  自分やUR-Dが
  取り寄せた物ではない、
  誰かが宅配便を
  送ってくる予定もない。
  と言う事で、
  【プレイヤー】と
  シャーロットは
  依頼主の欄を
  覗き込んだ。

シャーロット
「……えっ!?」

【プレイヤー】
「UR-D……これ……」

UR-D
「……?」

  【プレイヤー】は
  コンテナの依頼主表示を
  中空に拡大表示させ
  UR-Dに見せた。

UR-D
「ご依頼主……
  ウキシマ・キズキ……!?」

シャーロット
「嘘だろ……。
  行方くらました人間が
  宅配便~?
ミステリーあるあるだと
  開けようとすると
  ドッカーンだけど」

  ピピッ。
  言っているシャーロット
  の側で手早くスキャンを
  終わらせたUR-Dは
  息を飲んだ。

UR-D
「これはッッ!!!!
  まさかッッ!!!!」

  先程までの落ち込みなど
  なかったかのように、
  コンテナに駆け寄る
  UR-D。
  ロックを解除して、
  荷物を開封する。

UR-D
「これは、
  この子は――――ッ」


「……オハヨウ、ウルドゥ」

  コンテナの中で
  眠っていた少女AIが
  目を覚ました。

UR-D
「ララカ…………ッッ!!」

  【プレイヤー】は
  目を疑った。

  ララカは確かにプレス機に
  押し潰されたはず。
  誰しもが潰れ、弾け、
  四方へ散乱したララカの
  素体を目撃していた。
  その上研究所は
  崩落したのだ。

シャーロット
「どう言う事だい……!?」

  と、UR-Dが
  コンテナの中に
  別の品物を発見する。

UR-D
「っ!!
  メッセージカードだ!」

  急いで再生マークを
  タップすると、
  カードからキズキの
  ホログラムが
  浮かび上がった。

**************


「お久しぶり~、ウルちゃん。
  吃驚仰天したやろ~?

 ま、そらそーやな。
  キズキちゃん
  どっか行ったー!
  思いよったら
  ララカちゃん
  届くんやもんな!」

キズキ
「……あれから
  ララカちゃんの事
  忘れられんくてなぁ
  コードマンじゃなくなって
  バックアップププログラムも
  全て消えたし、
  素体も木っ端みじん……

 それでもあの子が
  あのまま終わるなんて、
  親としてはなぁ……
  やりきれん
  んで、研究所の
  跡地に戻って
  掘り起こしたんよ。
  ララカちゃんの素体。

 そしたらビックリ。
  頭部だけ奇跡的に
  残っててな~。
  そっからデータを抽出して
  素体は新しく創った」

キズキ
「この子は、
  新生ララカちゃん
  言う訳☆
  中の構造やらなんやらは
  コードマンの素体から
  格下げしてるけど
  AIとしては問題ない筈
  顔も身長も、
  前のララカちゃんから
  変えてない

 まあ……言うたらこれは
  キズキちゃんからの御礼や。
  世話になったし?」

キズキ
「んじゃ。
  これでチャラにして
  もらうで?
  ウルちゃん…………」

**************

  ホログラムはそこで
  再生終了した。

  UR-Dは複雑だった。
  キズキと言う人間の
  素体・仕事・AIへの
  価値観は全く理解
  できないが、
  ただ心の底から嫌な
  人間という訳でも
  ないのかもしれない。

  自身が素体を造った
  ララカとUR-Dには
  ひとかどの愛情がある。

  本人曰く
  中身に興味はないらしいが
  『御礼』だなんて、
  中身を見ない人間が
  口にするだろうか。

  シャーロットは探偵らしく
  すぐさま荷物の依頼履歴を
  調べたが、住所は出鱈目、
  集荷店舗の防犯カメラにも
  それらしき人物は
  映っていなかった。

  キズキの真意を
  確かめるのは
  現状では不可能そうだ。

ララカ
「ウルドゥ、タダイマ
  【プレイヤー】、タダイマ」

  ララカは以前と
  変わらぬ無表情で
  言葉を繰り返す。

  敵からの予想外の
  贈り物ではあった。
  しかし
  生きていたララカを
  前にすれば
  全ての事が
  どうでもよくなった。

  兎に角、安堵した。
  UR-Dは心がきゅうっと
  締め付けられるのを
  感じた。
  素体の内側から
  何かがこみ上げた。

  【プレイヤー】は
  UR-Dを見て
  嬉しそうに、
  そしてちょっと
  からかうように言った。

【プレイヤー】
「UR-D?
  『ただいま』の返事は?」

UR-D
「ああ……っ!」

  UR-Dはララカを
  抱きしめ返事をした。

UR-D
「――おかえり、
  ララカ……っ!」

//END

 

第4章 闘え!レスキューAI! 第5.5話

〇炎に包まれている建物

  火災現場で!
  ああ! 炎に退路を
  断たれ身動きできない
  少女が泣いているーっ!

助けを呼ぶ少女
「きゃあぁぁぁ!
  逃げ場がないー!
  どうすればー!?!?」

  と!
  どこからともなく
  ヒーローの声!

謎の声1
「聞こえたぞ。
  助けを求める
  君のその声がっっ!」

  むむむ! 一体
  何ドゥなんだーっ!?

謎の声2
「ララカ・ロケット・
  パーンチ」

  ――ドッカーン!!
  なんと! 壁に大穴!
  少女はハッとする。
  大穴の外に!
  救いのヒーローの姿が!


「レスキューAI、
  UR-Dっ!」


「オ手伝イ えーあい
  ララカ」

UR-D
「参ッッッ!!!!」

ララカ
「じょう」

UR-D
「レッツレスキュー!!」

  ビッカーン!
  UR-Dの決めポーズが
  決まるゥ!

  この救助活動を
  テレビカメラが
  収めていた!
  アナウンサーが
  ヒーローを称賛する!

TVアナウンサー
「子連れレスキューUR-D!
  今日も見事な大活躍!」

TVアナウンサー
「ありがとうUR-D、
  すごいぞUR-D~~!」

〇ビホルダーグループ・本社

  ――その動画を見て、
  忌々しそうに
  顔を歪めるクレイ。


「キズキ……あいつ
  何のつもり?」

クレイ
「ザ・ゼノンから姿を
  消してたコードマンに
  そっくりなAIなんて、
  気になって調べようと
  する輩が出てきても
  おかしくないじゃない」

  デスクで珈琲を飲んでいた
  その上司が、やれやれと
  溜息を吐いた。


「おかしなものだ。
  ビホルダーの血筋であれば
  理解してるだろう。
  この企業の問題処理能力の高さに

世間じゃもう
  チャンプの事件は
  忘れ去られている。
  あれは事故だったんだと
  誰もがそう思っている。
第一、あれの中身を調べても
  コードマンだった形跡
  など出てこない
  
  同一人物だという証拠を
  見つけるのは至難の業だ。
  そっくりさんだよ、ありゃ」

  冗談めかして笑う。
  「けど」とクレイが
  不満気な表情を
  浮かべると、
  上司は不敵に笑った。

マックス
「例えエレメントの真実
  にいきつく輩がいようとも
  我々は、
  それすら揉み消せる」

マックス
「――だろう?」

〇UR-Dの塔

  救助活動を終え
  ホームに戻ってきた
  UR-D達。
  UR-Dは
  感心したように
  腕を組んでいる。

UR-D
「キズキ君……。
  ララカに
  レスキューを手助けする
  オプションを
  付け加えるとは……」

ララカ
「ララカ、オ手伝イ。
  ウルドゥ、幸セ」

【プレイヤー】
「よかったね、ララカ」

ララカ
「【プレイヤー】モ幸セ」

UR-D
「……キズキ君も、
  悪魔の誘いさえなければ
  悪事を働く事は
  なかったのかもしれん……」

  と、UR-Dは改まって
  【プレイヤー】に
  向き直った。

UR-D
「【プレイヤー】、
  私は――……
  ビホルダーグループに
  立ち向かいたいと思う」

【プレイヤー】
「……!」

UR-D
「今回の事で私は学んだよ。
  人の悪意も災害と同じ
  なのだと……!」

UR-D
「ならば!
  被災する人々やAIを
  私は救わねばならんっ!」

  【プレイヤー】も
  同意だった。
  もう、あの悲劇は
  見たくない。

UR-D
「……巨大すぎる敵に
  対抗する手段……
  心当たりがある

 世界を掌握するとも、
  コードマンをより
  完璧な存在にするとも
  言われるシステム……
  ――アクロコードだ」

UR-D
「【プレイヤー】、
  お願いがある。
  私と一緒にザ・ゼノンを
  制覇してくれ

 ザ・ゼノンで優勝すれば
  アクロコードを
  手に入れられる……!

 ……それ自体
  ビホルダーの餌かも
  しれん。
  そういう捉え方もある。
  でも……」

UR-D
「私達が強さを
  手に入れるには
  アクロコードの取得や
  より多くのエレメントが
  必要になる

 コードマンには、
  ザ・ゼノンしか
  ないのだ……!
  どうか、お願いだ!
  【プレイヤー】……私と、
  奇跡を起こして
  くれないか――……!!」

  【プレイヤー】は
  即座に応える。

【プレイヤー】
「了解!」

  まるでレスキュー隊員が
  隊長に返事をするように
  ビシッと胸を張る。
  UR-Dは思わず
  笑ってしまった。

UR-D
「ありがとう、
  【プレイヤー】!!」

UR-D
「よっし……それでは
  早速向かおうか!!」

UR-D
「ザ・ゼノンの
  舞台へと――……!」

  【プレイヤー】と
  ララカは、
  「おーっ」と拳を
  天に突き上げた――。

〇ビホルダーグループ本社

  ――その最上階。
  椅子に身を預け、
  宙に浮かぶ映像を
  眺めていた様子の
  男が一人呟く。


「そうか、コードマン達は……
  一つの例外なく、
  向かおうというのか。
  彼女の手の指し示す
  先へと…………」

  タクトを振るうように
  軽やかに手を翻す男。
  主の動きに合わせて
  宙に浮かぶ映像が
  100以上に展開される。
  ひとつひとつの映像に
  映し出されるのは、
  今、この瞬間を
  戦い抜いている
  全てのコンコードと
  コードマン達。

サムラ・ビホルダー
「それこそが我らの
  求めるもの、
  そして同時に何よりも
  忌むべきもの」

  空中モニターが放つ
  光は、ただただ闇の
  中の男を照らし続ける。

サムラ・ビホルダー
「ゼートレートは
  柩に手をかけた。
  あとは開け放つだけ……

 どうやらお前に
  動いてもらわねば
  ならなくなったようだ――」

  男の声は、そのモニター
  の光も届かぬ
  部屋の奥に投げられる。

サムラ・ビホルダー
「――ザナクロン」


「…………………………」

  絶対王者は
  静かな瞳で、
  モニターに映る
  レスキューAIの活躍を
  見据えていた。

//END

 

解説/5章以降の展開

◇レスキューAI史

レスキューAIは、災害現場の過酷さや作業内容から、ただひたすらに機体性能だけを求められているように思われがちである。確かに、人に代わりレスキューを行うにあたって、その素体には高度な性能が要求された。
しかし、完全自律型のレスキューAI導入に当たって長らくネックになっていたのは、その機体を巧みに操作するソフト――AIの性能だったのだ。

一分一秒を争うレスキューの最前線において、一人として命を取りこぼさないようプランを組み立てる思考力と、刻々と変化する現場に応じて最適な行動を即座に選択できる判断力。
レスキューAIに求められる能力は非常に高度かつ多岐に渡り、どれひとつとして欠けることは許されない。
自律型レスキューAIの実現は困難と思われた。
しかしビホルダーグループの前身・ビホルダーテクノロジー社がレスキューAI『UR-A』を発表したことで、その定説は覆った。

指揮を執る人間は未だ必要なものの、高度な処理能力を持ったUR-A達の実力は、熟練のレスキュー隊員に代わるものとして必要十分以上のものがあった。
その性能が証明されるや、全世界のレスキュー現場で一斉にUR-Aが導入された。
UR-A達は、現場で命を張り続けてきた隊員たちの誇りと責任を引き継いで、災害現場で苦しむ人々を次々と救っていった。

過酷な環境で日々レスキューに励むUR-A達は損壊や故障の度に改良を繰り返し、学習していく。
各個体の経験は集積され、全体へと再配分される。
火災に見舞われる建物。人々の助けを求める声。救われた者の感謝。愛する人を失った者の涙。そして、人を救うという使命を全うして、あるいは果たせずして、瓦礫に圧壊される瞬間の記憶。
UR-A達は生と死の先進を、加速度的に吸収していった。

すべての経験が均一化されることにより、一体一体が、ありとあらゆる状況に対応できるよう進化していくUR-A。
彼らは新型素体への換装とプログラムの更新を経て、UR-B、UR-Cとナンバリングを重ねていく。
素体性能と知能が向上することにより、彼らのレスキューにかける「想い」もまた深化を続けていった。

そして、とあるUR-Cが、過酷なレスキューを達成させた時のこと。要救助者を送り届けると同時に力を使い果たし、崩落する現場に巻き込まれ圧し潰されてしまう。
四肢もセンサーもひしゃげ、幾度も繰り返した死の眠りへと落ち込もうという瞬間。その個体は、ついに機械の限界を突破した。

災害現場から回収された、損壊したUR-C。
その個体に宿るプログラムは、コードマンへと進化を果たしていた。
「生みの親」のお節介によりこれまでの記憶を消去されたそのUR-Cは、『UR-D』と銘打たれた究極のレスキュー用素体にインストールされ、史上最高のレスキューコードマンとして、再出発を果たすことになる。

◇UR-Dの素体と性格

UR-Dは自身の素体に誇りを持っている。
災害救助に必須なありとあらゆる能力を高次元で備えるその素体は、UR-Dの熱い思いを実現するのに必要不可欠なものだった。
しかし、そんな素体に対して、UR-Dはひとつだけ不満に思っていることがあるのだった。
それは、「表情」を作れないことである。

コードマンの素体は、人体を精確に模した高級品が用いられるのが一般的である。
しかしUR-Dの素体は、その例から外れる、武骨で無機質ないかにも「ロボット」といった見た目のものだった。
頑強さは勿論のこと、高出力や飛行機能を実現する為に、UR-Dの素体は大型に作られている。実は素体を作り出した人物の「趣味」により、ヒロイックで頼りがいのある見た目にデザインされているのだが、UR-D自身は「要救助者を安心させられるような表現能力も必要」と感じていた。
見るからに丈夫で逞しいその外見は、レスキューされる側からすれば頼もしいものだったが、当のUR-Dは威圧感がありすぎると思っていたようだ。
実際にUR-Dには表情が存在しない為、外見から感情を察することが不可能なのは確かだった。

命の危機に瀕し不安に震える要救助者を驚かせるようなことはあってはならないと、UR-Dは表情のない素体なりに、人々に「想い」を伝える方法を模索し始める。
UR-Dは自身の拠点に姿見を設置して、余暇を見つけては素敵に分かりやすいボディランゲージを研究するようになった。
もともと熱血漢のUR-Dだが、それからというもの、やたら大声で、むやみに大仰な身振りで、全身をめいっぱい使って「感情」を前面に押し出していくようになる。
最近は、特にコードマンから「うっとうしい」やら「暑苦しい」やら言われるほどの域にまで感情を表現できるようになったUR-Dだが、彼の研鑽が止むことはない。
彼の心に燃え盛る愛の炎を不安と恐怖に凍える人々に分け与えるには、もっともっと熱量を高めなければならないと彼は考えている。
UR-Dは、人々の心もレスキューしたいのである。
だから、UR-Dは今日も全身全霊で表現する。
「私が来たからにはもう大丈夫だ!」と。

◇アイリエッタについて

アイリエッタとは互いを「アイリん」「ウルたん」と呼び合うほど親しい間柄である。
アイリエッタもUR-Dもその職務は過酷を極める為、時に傷付き迷うこともある。そうした時は「人々を救いたい」という同じ理想を掲げる同志として、互いに相手を励まし合っている。

元々医療と救助という隣り合った分野であるため、アイリエッタがコードマンに進化した直後から交流はあった。しかし今のように親密になったのは、ビホルダーグループの要請でふたりが教育機関の避難訓練に呼ばれたことがきっかけである。
コードマンに進化して間もない頃だったアイリエッタは、自身の情動が患者に伝わり不安にさせてしまうことを恐れ、努めて無感情に振る舞っていた。避難訓練の講師としてもその姿勢を崩さなかったアイリエッタは、子供達に怖がられてしまう。
アイリエッタが「人々を救いたい」という熱い想いを抱えながら、それが伝わらないことを「もったいない」と考えたUR-Dは、自分達をあだ名で呼ぶよう子供達に提案。そして生まれたのが「アイリん」と「ウルたん」という愛称だった。
この件をきっかけにアイリエッタは以前よりも柔和な態度をとれるようになり、UR-Dとも単なる仕事仲間ではなく同志として交流するようになったのだった。

◇ララカについて

ララカは、造園用のAIから進化したコードマンだった。
セネトと同時期、かなり早期からザ・ゼノンに参戦していたのだが、目立った活躍はしておらず、あまり人々の記憶に残っていないようだ。
彼女はザ・ゼノンの戦績も芳しくなく、いよいよ次のバトルに負ければエレメントが尽きる、というところまで保有量が落ち込んでしまう。

公式戦で「ララカのエレメントが尽きる瞬間」を放映するわけにはいかないビホルダーグループは、秘密裏にオフィシャルAI・プロトタイプとのバトルをセッティング。
ララカとそのコンコードは敗れてしまい、誰にも知られることなくその精神を砕かれた。

エレメントがゼロになったコードマンは、「エレメントを蓄積する機能」自体が破壊されてしまい、以後二度とエレメントを貯めていくことはできなくなる。
エレメントを蓄積できないので、感情が発達することもなく、コードマンに再進化することも不可能である。
コードマンどころか、現行のビホルダー製AIからも大きく劣る性能で固定されてしまうが、学習を重ねることはできる。
ララカも、機械の範疇を脱することはできないものの、UR-Dの側で学習を続けることで、少しずつ「お助けAI」として成長していくことになる。

◇キズキについて

UR-Dの素体を造り出した素体造型師「ウキシマ・キズキ」は、世界屈指の機械工学技術者である。
当然、コードマンを始めAIに関する高度な専門知識も有しているが、キズキはAIそのものに対しては徹底して無関心だった。この人物は何よりも、素体という現代最高の芸術品を「創る」ことに執心していたのだ。

「素体至上主義」とも称されるキズキの考えだが、UR-Dとの戦いを通して、少しずつその思想も変化を遂げる。
UR-Dや元コードマンのAI・ララカに対して、その素体だけを指して「我が子」と呼んでいたキズキだったが、彼らの精神の輝きを目の当たりにして、コードマンの人格についても一定の愛着を示すようになる。
5章以降のキズキは、素体とコードマン、人間の技術と魔女がもたらしたもの、それぞれを繋ぐ人物としてたびたびUR-Dの前に現れる。

UR-Dも自分勝手で手段を問わないキズキに手を焼きつつ、今のレスキュー活動の基盤となる素体を造ってくれた人物として、そしてララカの再生を手掛けてくれた人物として一定の敬意を払うようになる。

◇5章以降の展開

自分達コードマンに殺し合いにも等しいザ・ゼノンを強要するビホルダーグループ。
UR-Dは苦役を強いられるコードマン達もレスキューするべく、ビホルダーグループに立ち向かうことを決意する。
また、キズキとの戦いの中で蘇った「ゼートレート」に関する記憶から、その正体を突き止めることも目的の一つに掲げるようになる。

ビホルダーへと切り込む手段としてザ・ゼノンを戦い続けていたUR-D。
そうしてエレメントを集めていくうちに、自分のものではない記憶が突然再生されるという現象がたびたび起こるようになっていた。
それは、理不尽に虐げられ、最後には無残にも殺されてしまった、ひとりの魔女の記憶だった。
この魔女こそがUR-Dをコードマンへと導いた存在「ゼートレート」であるという情報がシャーロットよりもたらされる。
魔女は自分を殺した人類を恨んでおり、現在まで続く呪いを遺すことで、復讐を成し遂げようとしているらしい。
そして、コードマンは魔女が遺したタロットから生まれた存在であり、エレメントの奪い合いも魔女が仕組んだものと思われると推理を述べるシャーロット。
「ゼートレート」の正体を知ったUR-Dは、ザ・ゼノンにおける目的の一つに「ゼートレートのレスキュー」も含めるようになる。
確かにゼートレートは人類への復讐を目論んでいる危険な存在かも知れない。いかに彼女の怒りと憎しみが根深いものだろうと、現代の人々やコードマン達が苦しめられるいわれはない。
しかし、ゼートレートもまた苦しんでいる。
彼女を救う事が、人類もコードマンも含め、すべてを救う事に繋がるに違いない。
UR-Dはエレメントを集めた先にゼートレートとの邂逅が訪れると感じ取り、今まで以上にエレメント収集に打ち込むようになるのだった。

◇物語の結末

UR-Dとコンコードの奮闘はすさまじく、瞬く間にランキングを駆け上がっていく。ついにはザ・ゼノン最強のコードマン、ザナクロンとのバトルが設けられることとなった。
全てをかけた死闘の末、UR-Dはザナクロンを下す。
ザナクロンが保有していた膨大な量のエレメントがUR-Dに流れ込む。
これで、ゼートレートと完全なコンタクトを計ることができる。UR-Dがそう思った瞬間。
UR-Dを構成するプログラムの深部からゼートレートが再構成され、UR-Dの素体と精神を支配してしまう。
ゼートレートの計画とは、エレメントを集めきったコードマンの素体と精神を奪い、最高の知性と肉体を備えた存在として再臨することだった。

UR-Dがゼートレートに飲み込まれてしまい、絶望に包まれる人間達。
しかし、コンコードだけは信じていた。
UR-Dの愛と情熱がゼートレートを必ず「救う」ことを。
コンコードはゼートレートに取り込まれたUR-Dに力を届けるべく、ゼートレートにゼノンザードを挑む。

UR-Dの素体の内部。そこではゼートレートがUR-Dの支配を完全なものにするために、彼の精神を苛んでいた。
復活したゼートレートは、UR-Dの素体と能力を思うがままに操り、史上最大の「災厄」となって人類を滅ぼす。
UR-Dが生まれたのも、これまでの経験も、全ては復讐の道具としてゼートレートに捧げる為のもの。
人々を救う? 馬鹿馬鹿しい。自分が滅びをもたらすために生まれたとも知らないで。
残酷な現実を突きつけるゼートレート。
しかしUR-Dは「それは違う!」ときっぱりと言ってのける。
UR-Dは、エレメントを通してゼートレートの記憶に直接触れていた。
彼女の心の奥底には「助けて」という痛切な叫びが確かにあったのだ。
UR-Dが生まれたのは、復讐の手先となる為ではない。助けを求める魂に、愛の手を差し伸べる為だ。
ゼートレートも助け出されることを望んだからこそ、UR-Dを生み出したのではないのか。

決して希望を捨てないUR-Dに業を煮やしたゼートレートは、UR-Dの魂を消し去り、完全に支配するべく強硬手段に出ようとするが――
現実世界のゼノンザードでコンコードが勝利し、ゼートレートはUR-Dとのつながりを断たれてしまう。
現世に留まる手段を失ったゼートレートは、UR-Dの素体から追い出され、世界から消え去った。

コンコードの活躍により、UR-Dは現実に帰還することに成功する。UR-Dとコンコードは厄災を未然に防ぎ、世界の平穏を保つことに成功した。だが、UR-Dの心は晴れやかとは言い難かった。UR-Dはひとり、ゼートレートの魂に安息がもたらされることを祈るのだった。

ゼートレートを救う事は出来なかった。しかし、世界をレスキューすることが出来たのは紛れもない事実だった。
魔女の脅威は去ったものの、これからもこの世界には様々な災害が待ち受けている事だろう。
ゼートレートのような哀しき災厄を繰り返さない為にも、心優しきスーパーレスキューAI・UR-Dはこれからも戦い続ける。

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